周処

周処 - 乱世の英雄、そして悲劇の最期

周処（しゅうしょ、236年-297年）は、中国三国時代から西晋にかけて活躍した武将です。呉、そして西晋に仕え、その生涯は数々のドラマチックな出来事に彩られています。

壮絶な過去と転身の物語

呉の有力な豪族の子として生まれた周処でしたが、幼くして父を亡くします。若い頃の彼は荒々しく、郷里では恐れられる存在でした。ある日、郷里の長老たちから「南山の白額虎、長橋の蛟龍、そしてあなた」の三つが害悪として挙げられ、平和な生活の妨げになっていると告げられます。周処はこの言葉を契機に、自ら虎を退治し、蛟龍とも戦い、郷里の民衆を脅かしていた存在を全て除去しました。この出来事は「周処除三害」として、後世にまで語り継がれる逸話となっています。この経験を通して、周処は自らの行いを深く反省し、改心を決意します。

その後、彼は陸機・陸雲兄弟を訪ね、自身の更生を志すも年齢を理由に諦めかけていましたが、陸雲から励まされ、勉学に励みました。そして才能を開花させ、州に招かれ、呉の役人としてキャリアをスタートさせます。孫晧時代の終わりには無難督にまで昇進しました。

時代の転換点と西晋での活躍

西晋が呉を滅ぼすと、周処は西晋に仕えることになります。洛陽に赴き、新平郡太守、広漢郡太守を歴任し、いずれの役職においても優れた手腕を発揮しました。老いた母親のために一度は辞職して帰郷しますが、その後、楚の内史に任命され、さらに散騎常侍として都に召された際には、先に地方の職務を全うしてから上京するという、誠実な姿勢を見せました。

西晋朝廷では御史中丞となり、権力者であろうと不正を厳しく弾劾しました。その正義感の強さから、梁王司馬肜ら権力者たちの恨みを買ったとも伝えられています。

忠義の果てに

元康6年（296年）、氐族の斉万年が反乱を起こします。周処は建威将軍に任命され、司馬肜と夏侯駿の配下として討伐軍に加わることになります。しかし、陳準の中書令からの忠告にも関わらず、周処は援軍不足の中で圧倒的な敵の数と戦い、壮絶な最期を遂げます。

わずか5000の兵で7万の敵と戦い、一日中戦い続け、1万人を討ち取るも、援軍が来ないまま、力尽きて戦死しました。周処の死は、西晋朝廷の無策と、権力者の陰謀によって招かれた悲劇であったと言えるでしょう。

彼の死後、周処は平西将軍を追贈され、潘岳や閻纘らから哀悼の詩が捧げられました。東晋が建国されると、太常の賀循の提議により、「孝」の諡号が贈られました。

功績とその後

周処は、武将としての卓越した能力に加え、学問にも通じており、『黙語』30篇のほか、『風土記』『呉書』などの著作を残したと伝えられています。江蘇省宜興市には周処一族の墓が発見されており、そこから出土した副葬品は、当時の社会状況を知る上で貴重な資料となっています。周処の生涯は、乱世を生き抜いた武将のドラマであり、同時に、忠義を貫いた者の悲劇でもあります。彼の物語は、現代においても人々に深い感銘を与え続けています。

参考資料

『三国志』巻60
『資治通鑑』巻82
『世説新語』第15「自新篇」
『晋書』巻58
* 『図説中国文明史5 魏晋南北朝 融合する文明』（羅宗真著・住谷孝之訳、創元社、2005年）

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