玉真公主

玉真公主：唐代を生きた道教のプリンセス

玉真公主（ぎょくしんこうしゅ）は、唐の睿宗の娘であり、玄宗皇帝の同母妹として、激動の時代を生きた女性です。彼女は幼い頃から道教に深く帰依し、自ら出家して道士となり、その生涯を信仰と芸術に捧げました。

生い立ちと出家

天授2年（691年）に、睿宗と竇徳妃の娘として生まれた玉真公主。同母兄には、後に皇帝となる李隆基（玄宗）がいます。彼女は幼い頃から聡明で、芸術や学問にも秀でていました。景雲2年（711年）、姉である金仙公主と共に道士の史崇玄に師事し出家。長安の輔興坊に玉真女冠観が建立され、道士としての道を歩み始めます。

先天元年（712年）には、道士の最高位である上清玄都大洞三景師を授けられました。しかし、翌年には叔母である太平公主が政変により自害。史崇玄も処刑されたため、玄宗の庇護のもと、司馬承禎らに師事することになります。

道教への傾倒と李白との交流

玄宗の命により、玉真公主は王屋山に隠棲していた司馬承禎のもとを訪れ、道教の儀式を行いました。彼女は道教の経典や儀礼に関する事業にも深く関わり、女性道士の統括も行いました。また、開元17年（729年）には、宇文融の失脚に関わったとされています。

天宝元年（742年）には、道士の元丹丘と共に、詩人の李白と会見しました。彼女の推薦により、李白は翰林供奉に就任し、才能を開花させることになります。また、玄宗の命により、老子の廟を建立するために譙郡へ赴き、その途上で華山や太室山、王屋山などの名山を巡り、高名な道士たちと交流しました。この際に「玉真万華真人」という称号を得て、日照りに雨を降らせたと伝えられています。

公主の称号を返上

天宝3載（744年）、玉真公主は突如として公主の称号を返上し、封地を手放すことを願い出ます。玄宗は一度は拒否しましたが、彼女の強い意志に打たれ、最終的には許可しました。この行動は、彼女の道教への深い信仰と、名誉や財産への執着のなさを示すものとして、後世に語り継がれています。

安史の乱と晩年

天宝14載（755年）に安史の乱が勃発すると、玉真公主は蜀州の青城山へと避難し、そこで修行を続けました。玄宗が長安に帰還した後も、彼女は宮中に出入りし、常にその傍らに寄り添いました。高力士らが流刑に処された後も、ただ一人玄宗に仕え続け、その死後も生き、宝応元年（762年）にその生涯を閉じました。彼女の墓は、青城山に建てられています。

金仙公主について

玉真公主の同母姉である金仙公主もまた、道士として生きた女性です。彼女は永昌元年（689年）に生まれ、景雲元年（710年）に金仙公主に封じられました。景雲2年（711年）には、妹と共に史崇玄に師事し出家。長安の輔興坊に金仙女冠観が建立されました。彼女は華山にも道観を持っていたと伝えられていますが、開元20年（732年）に洛陽で亡くなっています。

玉真公主は、唐代という激動の時代を、道教への深い信仰心と、芸術への情熱を持って生き抜いた女性でした。彼女の生涯は、現代においても私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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