王信 (明の軍人)

王信（おう しん）は、明代に活躍した軍人であり、字は君実（くんじつ）と称しました。彼の出自は漢中府南鄭県（かんちゅうふなんていけん）にあり、生年は不詳ですが、1486年に没しました。

王信の生涯は、父の死という悲劇から始まりました。父の王忠（おうちゅう）は、王信が生まれてわずか半年のうちに、漠北遠征で戦死してしまいます。母の岳氏（がくし）は、苦労を重ねながら王信を育て上げました。

正統年間（1436年 - 1449年）、王信は寛河衛千戸（かんがえいせんこ）の地位を継承し、軍人としての道を歩み始めました。正統14年（1449年）、オイラトのエセン・ハーンが北京に迫ると、王信は西直門外で敵軍と果敢に戦い、その武功が認められて永清右衛指揮僉事（えいせいゆうえいしきけんじ）に抜擢されました。その後も、景泰6年（1455年）には五開衛（ごかいえい）の少数民族による反乱を鎮圧し、指揮同知（しきどうち）に昇進しています。

天順5年（1461年）、曹欽（そうきん）が反乱を起こすと、王信は東市でこれを迎え撃ちました。その功績により、指揮使（しきし）となり、文華殿侍衛（ぶんかでんじえい）という重要な役職を務めることになりました。

成化元年（1465年）、王信は更なる功績を重ね、都指揮僉事（としくいけんじ）に昇進。荊州府（けいしゅうふ）と襄陽府（じょうようふ）の守備を任されました。この頃、劉千斤（りゅうせんきん）による反乱が発生すると、王信は房県（ぼうけん）に進軍し、県城を拠点に抗戦しました。王信の兵力はわずか1000人に満たなかったのに対し、反乱軍は4000人もの大軍で房県城を包囲しましたが、王信は40日以上にわたって徹底抗戦しました。そして、決死隊を選抜し、城外5、6里の場所に火砲を設置するという奇策に出ました。反乱軍は援軍が来たと思い込み逃走。王信はこれを追撃し、見事に打ち破りました。その後、白圭（はくけい）率いる官軍が到着すると、王信はその指揮下で右参将（うさんしょう）として、後巌山（こうがんざん）を攻略し、反乱軍を壊滅させることに成功しました。これらの功績が評価され、王信は都指揮同知（としくいどうち）に昇進しました。

さらに、石龍（せきりゅう）の反乱軍が巫山県（ふざんけん）を攻め落とすと、王信は他の将軍たちと共にこれを鎮圧しました。当時、荊州府、襄陽府、南陽府（なんようふ）周辺では、多くの流民がたむろしており、王信はこれを憂慮し朝廷に報告しました。成化4年（1468年）1月、王信は南陽府の軍務を兼任するように命じられました。また、李原（りげん）らが反乱を起こすと、王信は項忠（こうちゅう）と共にこれを鎮圧しました。成化8年（1472年）9月には、都督僉事（ととくけんじ）の代行に抜擢され、臨清県（りんせいけん）に駐屯し、守備を任されました。

成化13年（1477年）、王信は本官のまま平蛮将軍（へいばんしょうぐん）の印を授けられ、総兵官（そうへいかん）として湖広（ここう）に移駐しました。この地では、永順（えいじゅん）と保靖（ほせい）の宣慰使司（せんいしし）の兵が、代々仇として殺し合っていました。王信が両者に利害を説くと、両者は和解しました。また、靖州（せいしゅう）と武岡州（ぶこうしゅう）の少数民族が長年争っていたため、明の守臣の間では彼らを掃討しようという意見が出ていました。しかし、王信は自ら両地に赴き、牛と酒で彼らを労い、それぞれの非を責めると、両者は謝罪し、争いが収束しました。

成化17年（1481年）、王信は公正な人物を知府や県令に選び、官の冗員を削減するよう上奏しました。また、部指揮（ぶしき）の劉斌（りゅうひん）や張全（ちょうぜん）を智勇兼備の人物として、朝廷に推薦しました。成化21年（1485年）、巡撫（じゅんぶ）の馬馴（ばじゅん）らが、副総兵（ふくそうへい）の周賢（しゅうけん）と参将（さんしょう）の彭倫（ほうりん）の官位がいずれも都督僉事であるにもかかわらず、王信が都督僉事の代行の職にとどまっているのは不当であるとして、位を進めるよう進言しました。兵部が王信に軍功がないとして反対しましたが、成化帝は特例として王信を都督同知（ととくどうち）に抜擢しました。その後、王信は総督漕運（そうとくそううん）に転じましたが、翌年にこの世を去りました。

王信の息子である王継善（おうけいぜん）と王従善（おうちゅうぜん）は、いずれも進士に合格し、その血筋は後世にまで受け継がれました。

王信は、その生涯を通じて数々の戦で武功を挙げ、地方の安定に貢献した明代の優れた軍人でした。

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