王子稲荷神社

王子稲荷神社：歴史と伝統、そして狐火の伝説

東京都北区岸町に位置する王子稲荷神社は、古くから人々に親しまれてきた神社です。東国三十三ヶ国稲荷総司としての伝承を持ち、その歴史は深く、源頼朝や徳川家康といった歴史上の人物とも関わりがあります。また、江戸時代には狐火の伝説で知られ、現在も多くの伝統行事やイベントが行われています。

由緒と歴史

古くは「岸稲荷」と呼ばれていました。その名の由来は、かつて荒川流域が広大だった頃、川の岸辺に鎮座していたことにあります。神社の創建時期は定かではありませんが、『新編武蔵風土記稿』には、治承四年（1180年）に源頼朝より奉納を受けたとの記述があり、古くから信仰を集めていたことが伺えます。

徳川家康は、王子稲荷神社と王子権現、そして両社の別当寺であった金輪寺に宥養上人を招き、以降、神社は江戸北域において大きな存在感を示すようになりました。

狐火の伝説

王子稲荷神社は、江戸時代を通じて「狐火」で有名でした。『江戸砂子』には、毎年大晦日の夜に多くの狐が社地に集まり、装束を改めるという記述があります。この狐火の伝説は、数々の絵画や浮世絵にも描かれ、現在も大晦日から元日未明にかけて「大晦日狐の行列」というイベントとして再現されています。

神社が「関東八州」の稲荷の総社として紹介されることもありますが、元々は東国三十三ヶ国稲荷総司の伝承を持っていました。この「東国三十三ヶ国」の解釈には諸説ありますが、中世以降は陸奥国まで含む広い範囲を指していたと考えられています。江戸中期までは境内には「東国三十三国」の幟や扁額が備えられていましたが、寛政の改革時に幕府の政策により、「関八州稲荷」の頭領として知られるようになりました。

祭事

王子稲荷神社では、毎月午の日に縁日があり、特に2月初午の日、二の午、三の午には賑わいます。「凧市」も有名で、江戸時代から続く伝統行事で、火災除けや無病息災、商売繁盛のご利益があるとされています。

文化財と美術

王子稲荷神社は江戸時代、名所として多くの絵画に描かれました。歌川広重の『名所[[江戸百景]]』にもその姿が収められています。また、歌川豊国の浮世絵「王子稲荷初午祭ノ図」も有名ですが、これは甲斐善光寺を描いたものを題名を変えて再利用したものであることが指摘されています。

神社には、柴田是真の「額面著色鬼女図」や谷文晁の「龍図」など、貴重な文化財も数多く残されています。

近現代

明治時代には乃木希典夫妻の崇敬が篤く、1962年には乃木神社に赤坂王子稲荷神社として分霊されました。現在、王子稲荷神社には氏子地域が存在せず、所在地は王子神社の氏子地域に含まれています。

まとめ

王子稲荷神社は、長い歴史と数々の伝説、そして伝統行事を持ち、多くの人々に親しまれてきた神社です。狐火の伝説や凧市、そして貴重な文化財など、見どころは数多く、訪れる価値のある場所と言えるでしょう。

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