王恢

王恢（おう かい）

王恢は、前漢時代に活躍した人物であり、燕国（現在の中国北部）の出身です。彼の生涯は、漢王朝と北方の遊牧民族である匈奴との関係に深く関わっています。

生涯

建元6年（紀元前135年）、閩越と東越という二つの国が互いに攻撃し合う事件が発生しました。この時、王恢は大鴻臚として韓安国と共に派遣され、事態の収拾に当たりました。しかし、彼らが東越に到着する前に、東越の人々が自分たちの王を殺害し、漢に降伏したため、大きな戦乱は避けられました。

その後、匈奴が漢に対して和親を申し出た際、武帝（当時の皇帝）は大臣たちにこの件について議論させました。王恢は大行として、匈奴を攻撃するべきだと強く主張しましたが、韓安国は和親を唱え、大臣たちの多くも韓安国を支持しました。最終的に、武帝は和親を受け入れる決断を下しました。

元光2年（紀元前133年）、事態は一変します。将軍であった王恢は、馬邑（現在の山西省朔州市）の富豪である聶壱を利用し、匈奴を利益で誘い出して攻撃するという大胆な策を立案しました（馬邑の役）。王恢自身も護軍将軍として、韓安国、李広、公孫賀、李息らと共に軍を率いて従軍しました。しかし、匈奴の軍臣単于は、この策略を事前に察知し、一人の監察官からの情報をもとに、急遽軍を引き上げました。この事件をきっかけに、匈奴は漢との長年にわたる友好関係を断絶し、再び対立の時代へと突入することになりました。

しかし、この作戦の失敗の責任は王恢に問われることとなりました。彼は死罪に相当すると判断され、丞相の田蚡に賄賂を贈り、さらに田蚡の姉であり武帝の生母である王太后を通じて嘆願を試みました。しかし、武帝はこれを許さず、王恢はついに観念し、自殺という道を選びました。

王恢の生涯は、漢王朝と匈奴との関係における重要な転換点となりました。彼の戦略は、結果として両国の長きにわたる対立を引き起こし、その後の歴史に大きな影響を与えました。また、彼の最期は、政治的な駆け引きの厳しさと、権力者の冷酷さを物語るものとして、後世に語り継がれています。

参考文献

* 班固著『漢書』

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