王文 (明)

明代の官僚、王文の生涯

王文（おう ぶん、1393年 - 1457年）は、明代の官僚であり、字は千之と称しました。祁州束鹿県（現在の河北省）の出身です。当初は王強と名乗っていましたが、後にその名を改めました。

官僚としての台頭

1421年、王文は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。監察御史に任じられると、その廉潔さと法を遵守する姿勢から、都御史の顧佐に高く評価されました。1435年には、宣徳帝の命を受け、彰徳府の宗教反乱の鎮圧に当たり、その功績から「文」の名を賜りました。

その後、英宗が即位すると、王文は陝西按察使に転じましたが、父の死により一時辞職します。しかし、すぐに復帰し、1438年には右副都御史に抜擢され、巡撫寧夏を任されました。1440年には北京に召還され、大理寺卿に、翌年には右都御史に昇進しました。

辺境での活躍と民政

1444年、王文は延綏・寧夏で辺境の軍事を監察し、軍紀の乱れを正しました。その後、陝西に駐屯し、飢饉が発生した際には、租税の免除を求める上奏を行い、民衆の救済に尽力しました。これらの功績により、左都御史に昇進しました。

政治的転落と悲劇的な最期

1450年、王文は北京に召還され都察院の事務を管掌しましたが、給事中らに弾劾され、一時投獄されます。しかし、罪を許され復帰しました。1452年には太子太保の位を加えられ、南京での地震や洪水被害の対応にあたり、民生の安定に尽力しました。

その後、吏部尚書に転じ、翰林院学士を兼ね、文淵閣に宿直するなど、その地位をさらに高めました。しかし、1456年に景泰帝が病に倒れると、王文は沂王朱見深の皇太子復位に反対したことが、後に大きな災厄を招くことになります。

1457年、英宗が復位すると、王文は于謙とともに捕らえられ、外藩の王を擁立しようとしたとして弾劾され、市中で斬首刑に処せられました。息子たちは辺境に流されるという悲劇に見舞われました。

死後の名誉回復

成化初年、王文の息子たちは赦免され北京に戻り、王文自身も名誉を回復し、官爵が戻され、太保の位を追贈されました。諡は毅愍とされました。

王文の生涯は、官僚としての卓越した能力と清廉さ、そして民衆を思う心に満ちていましたが、政治の激流の中で悲劇的な最期を遂げました。しかし、その死後、名誉を回復したことは、彼が正当な評価を受けた証と言えるでしょう。

参考資料

* 『明史』巻168 列伝第56

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