王臨

王臨（おう りん）の生涯：王莽の息子、皇太子の悲劇

王臨（紀元前9年 - 紀元21年）は、新を建国した王莽の四男として生まれました。当初は父から皇太子に指名されるも、後に王莽暗殺を企てたことが発覚し、自害するという悲劇的な生涯を閉じました。彼の人生は、前漢から新への激動期における王莽の権力掌握の過程と、その中で翻弄される家族の姿を浮き彫りにしています。

生い立ちと家族

王臨は、王莽と王氏の間に生まれました。兄には王宇、王獲、王安がおり、姉妹には後の王皇后がいました。王莽は、兄の息子である王光も大切に育てていました。

王莽は哀帝との政争に敗れ一時失脚しますが、哀帝の死後、権力を掌握。平帝を擁立し、その外戚を排除して政治の実権を握ります。王臨の兄である王宇は、王莽のやり方に反発し、衛姫を平帝に会わせようと画策しますが失敗。王莽によって処刑されます。この事件を機に、王莽はさらに反対勢力を粛清し、恐怖政治を敷きました。

列侯から公爵へ

王莽は、娘を平帝の皇后に立て、自らの権勢を強固なものとします。そして、王舜らの進言により、王莽は殷の伊尹、周の周公旦になぞらえられ、宰衡という地位に就きます。これにより、王莽は三公の上に立つことになり、王臨も賞都侯に封じられました。

平帝の死後、王莽は孺子嬰を立てて摂政となります。翟義の反乱を鎮圧したことで、王莽はさらに権力を強め、群臣の進言により、王臨は褒新公に封じられました。これにより、王臨は兄の王安とともに、漢において数少ない公爵の一人となります。

皇太子、そして暗殺計画

王莽はついに漢を滅ぼし、新を建国して皇帝に即位します。王臨の兄たちはすでに亡くなっていたため、王臨が皇太子に指名されました。

しかし、王臨は王莽の侍女である原碧と密通し、そのことが露見することを恐れて、原碧とともに王莽の暗殺を企てます。妻の劉愔は、星占いから王臨に宮中で不幸が起こることを予言し、王臨は暗殺計画の成功を確信します。

転落、そして自害

王莽は、王臨を統義陽王に降格させ、都から追放します。王臨は、母である王氏に手紙を送り、自身の身を案じますが、王莽はその手紙を見つけ激怒。王臨に悪意を抱いていることを疑います。

王氏が亡くなると、王莽は王臨に葬儀への参加を許しません。そして、原碧を捕らえて尋問し、王臨の暗殺計画を白状させます。王莽は王臨に毒杯を与えようとしますが、王臨は拒否し、剣で自害しました。王莽は王臨の死を悼む一方で、その罪を明らかにするために繆王という諡号を与えました。また、王臨の妻である劉愔も自害しました。

王臨の死後

王臨の死後、兄の王安も病死し、王莽は後継者不足に悩まされます。王莽は、かつて寵愛していた侍女の子である王興らを呼び寄せ、爵位を与えます。

王莽の支配は長くは続かず、劉歆の謀反が発覚し、王莽自身も更始帝の軍によって殺害されます。王臨の姉妹である王氏も自害し、新王朝は滅亡しました。

王臨の生涯は、王莽の権力欲と、その中で犠牲となった家族の悲劇を象徴しています。王莽は儒教的理想を掲げながらも、実際には権力のためには手段を選ばない人物であり、その矛盾した姿勢が、多くの人々の離反を招いたと言えるでしょう。

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