王通 (明)

王通（おう つう）

王通は、明代に活躍した軍人であり、その生涯は栄光と挫折、そして復活に満ちています。字は彦亨といい、本貫は西安府咸寧県にありました。彼の人生は、軍人としての道を歩み、数々の戦いを経験し、最終的にはその功績と失敗が入り混じった複雑なものとなりました。

生い立ちと初期のキャリア

王通は、金郷侯王真の息子として生まれました。父親の官位を継ぎ、都指揮使となります。王通は父の率いていた兵を指揮し、各地を転戦して功績を挙げ、都督僉事にまで昇進しました。その軍事的な才能は、永楽帝の時代に高く評価され、永楽元年（1403年）には武義伯に封じられ、世襲の権利を与えられました。さらに、永楽7年（1409年）には長陵の造営を監督するという重要な任務を任されました。永楽11年（1413年）には、その功績が認められ、成山侯へと爵位をさらに進められました。

永楽帝の遠征と活躍

王通は、永楽帝の信頼厚く、永楽12年（1414年）には漠北遠征に従軍し、左翼を管轄しました。永楽16年（1418年）には、陝西省で飢饉が発生した際、その救済活動に尽力しました。さらに、永楽20年（1422年）にも再び漠北遠征に従い、今度は右翼を管轄しました。永楽帝の死後、洪熙帝が即位すると、王通は後府を掌管するよう命じられ、太子太保の位を加えられました。

交趾での戦いと挫折

しかし、王通の運命は、交趾（現在のベトナム北部）での戦いを境に大きく変わります。当時、交趾では総兵官であった豊城侯李彬が死去しており、栄昌伯陳智と都督方政が後任として駐屯していましたが、両者の関係は険悪で、連携が取れていませんでした。その隙を突いて、黎利が勢力を拡大し、明の軍や官吏を殺害していました。宣徳元年（1426年）、宣徳帝は陳智と方政の官爵を剥奪し、王通を征夷将軍に任命し、黎利討伐のため交趾に派遣しました。当初、王通軍は黎利軍を破るなど戦果を上げましたが、同年11月、応平の寧橋で伏兵に遭い、大敗を喫してしまいます。この戦いで2万から3万もの兵士が戦死し、兵部尚書の陳洽も自害するという大惨事となりました。王通自身も負傷し、交州府に逃げ帰りました。黎利は、この勝利に乗じて東関を包囲し、王通は戦意を喪失して、北京に黎利の封建を認めるよう密かに請願しました。しかし、按察使の楊時習の反対にあい、清化知州の羅通らも城を死守しました。

撤退と失脚、そして復活

北京の朝廷は、事態を重く見て柳升らを派遣し、王通を支援しようとしました。しかし、宣徳2年（1427年）には、黎利が再び交州府城を攻撃し、王通軍は一旦はこれを撃退したものの、黎利軍は勢いを盛り返し、交州を包囲しました。王通は、出撃を避け、黎利との講和を進めました。同年9月、柳升が戦死し、沐晟の軍も進軍できなくなったため、王通は黎利と密かに交渉を進め、ついに軍を撤退させることを決定しました。王通は、明の官吏や軍民を交州から退去させ、黎利と盟約を結んで撤退を開始しました。王通は、広西に撤退するまで、北京にこの撤退を報告しませんでした。この一連の行動が問題視され、宣徳3年（1428年）に北京に帰還した王通は、群臣からの弾劾を受け、死刑を宣告されて獄に繋がれ、世襲の権利を停止され、財産も没収されました。しかし、正統4年（1439年）には、特赦により一命を取り留め、爵位を剥奪されたものの、平民となりました。

その後、正統14年（1449年）に景泰帝が即位すると、王通は都督僉事に再び起用され、北京の防衛に貢献しました。エセン・ハーンの侵攻を防いだ功績により、都督同知に進み、天寿山を守備するよう命じられ、没収されていた財産も返還されました。景泰3年（1452年）、王通は死去しました。

死後

天順元年（1457年）、王通の子である王琮が成山伯の爵位を継ぎました。

王通の生涯は、明代の激動期を象徴するものであり、その栄光と挫折、そして復活は、歴史の中で語り継がれています。


参考文献

* 『明史』巻154 列伝第42

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