李彬

李彬（り ひん、1361年 - 1422年）は、明代初期の武将で、字は質文と称しました。本貫は濠州定遠県にあり、父の李信から軍人としての血を受け継ぎました。

初期の軍歴と燕王朱棣への帰順

李彬は洪武22年（1389年）に父の跡を継ぎ、済川衛指揮僉事の職に就きました。翌年には、潁国公傅友徳に従い北伐に参加し、多くの敵兵を捕斬する武功を挙げました。その後も、宣府城の測量や修築、徳勝口城や万全保安城の築城に携わるなど、軍事インフラの整備にも貢献しました。洪武29年には、偵察任務で泥河営から哈喇までを探索し、その後は兵を広昌に駐屯させました。

建文元年（1399年）に燕王朱棣が挙兵すると、李彬は燕王に帰順し、先鋒として各地を転戦しました。薊州鎮や遵化を攻略して指揮同知に進み、雄県や莫州を陥落させて都指揮僉事に昇進。真定、盧龍、大寧、広昌での戦いでも功績を挙げ、五軍が組織されると右軍を率いることとなりました。白溝河の戦いや済南攻略戦を経て都指揮同知に進み、滄州を陥落させました。建文3年には順徳や定州を奪取し、右軍都督僉事に昇進しましたが、楊村での戦いで平安の軍に敗れ負傷し、北平に後送されました。

建文4年（1402年）には長江を渡り南京に入り、永楽帝（朱棣）の即位後は、中宮の護衛を任されました。

豊城侯への封爵と対外戦争

永楽元年（1403年）、丘福の建議により李彬は豊城侯に封じられ、世襲の権利を与えられました。翌年には、襄城伯李濬の永新県での反乱鎮圧を支援するため派遣されましたが、到着前に反乱は鎮圧されたため、広東に駐屯することとなりました。

永楽4年（1406年）、南京に召還された後、南陽の皁君山の反乱鎮圧に従事しました。同年7月には、左参将として沐晟に従いベトナムの胡朝征討に参戦。12月には雲陽伯陳旭と共に胡朝の西都を陥落させ、木丸江で胡朝軍を撃破しました。永楽6年に凱旋し、500石の加増を受け、総兵官として倭寇の警戒任務に就きました。永楽7年には長沙で反乱を起こした李法良を捕らえ、永楽9年には浙江・福建の兵を率いて海賊を追捕しました。

モンゴルとの交渉と甘粛駐屯

永楽10年（1412年）、李彬は甘粛に赴き、西寧侯宋琥と共に明に降伏したモンゴルの首長たちを迎えました。李彬は柳升と共に国境の兵に厳戒態勢を敷き、土官の李英に野馬川を防備させました。涼州の首長老的罕が離反すると、李英が追撃して捕らえましたが、老的罕は赤斤蒙古衛に逃れました。李彬は遠征の困難さを訴え、穏健策を主張し、永楽11年（1413年）には甘粛に駐屯し、赤斤蒙古衛は老的罕を捕縛して永楽帝に献上しました。永楽12年には永楽帝の漠北遠征に従い、右哨を率いて忽失温で敵を破り、トール川まで追撃しました。凱旋後、褒賞を受け、陝西に移駐しました。

交趾での戦いと晩年

永楽15年（1417年）、李彬は征夷将軍として交趾に駐屯し、陸那県で反乱を起こした阮貞を撃破、都督の朱広らを平順州と北昼諸寨に派遣しました。永楽16年、清化府土巡検の黎利が反乱を起こすと、李彬は朱広を派遣して黎利を撃破しましたが、敗走した黎利は再び勢力を拡大しました。永楽17年、都督同知の方政を派遣して可藍柵で黎利を襲撃し、その将軍の阮個立らを捕らえましたが、黎利は老撾に逃れました。李彬が交趾に軍を返そうとした際、黎利が再挙兵したため、都指揮の黄誠がこれを撃退しました。李彬は方政、鄭公証、丁宗老、朱広、徐謜らを派遣し、各地で反乱軍を撃破しました。

永楽19年（1421年）には、交趾への食糧輸送が滞っていたことから、官軍と土司軍による屯田を提案し許可されました。李彬は兵を老撾に入れて黎利を捜索しようとしましたが、病床に伏したため実現しませんでした。永楽20年（1422年）に62歳で亡くなり、茂国公を追贈され、諡は剛毅とされました。子の李賢が豊城侯の爵位を継ぎました。

李彬は、その生涯を通じて数々の戦場を駆け巡り、明朝の安定に貢献しました。彼の武勇と知略は、後世に語り継がれています。

もう一度検索