陳洽

陳洽（ちん こう、1370年 - 1426年）は、明代の官僚であり軍人です。字は叔遠といい、常州武進県の出身です。彼は古代の事物を好み、学問に励み、兄の陳済、弟の陳浚と共にその名を知られていました。

洪武年間、書を得意としたことから推薦を受け、兵科給事中に任じられました。洪武帝の命で閲兵を行った際、彼は一瞥しただけで兵士の性質を見抜くことができました。その有能さに感銘を受けた洪武帝は、陳洽に金織衣を賜りました。その後、父が五開に駐屯中に亡くなったため、陳洽は喪に服すために現地へ向かいました。少数民族の反乱で道が塞がれていたため、険しい山道を通って父の遺骨を背負い帰郷しました。

1401年（建文3年）、茹瑺の推薦により、吏部文選郎中に起用されました。1402年（建文4年）、永楽帝が即位すると、陳洽は吏部右侍郎に抜擢されます。1405年（永楽3年）には大理寺卿に転じました。当時、永楽帝はベトナム胡朝の胡季犛父子による簒奪を認めず、陳添平を安南王として擁立し、黄中や呂毅らを派遣しましたが、彼らは敗北し、陳添平も捕らえられてしまいました。

1406年（永楽4年）、陳洽は広西に赴くよう命じられ、韓観と共に兵士を選抜しました。永楽帝がベトナム遠征軍を派遣すると、陳洽は遠征軍の軍務に参画し、主に糧食の補給を担当しました。1407年（永楽5年）、遠征軍が胡朝を滅ぼすと、陳洽は吏部左侍郎に転じました。当時、黄福が交趾の布政使司と按察使司の事務を管掌し、寛大な政策で民心を得ようとしていましたが、陳洽は有能な人材を選抜し、社会の規律を正しました。将兵の功績や罪を査定し、土官を設置、兵糧を管理し、その決断は迅速かつ的確でした。陳洽が南京に召還されると、礼部と工部の事務を代行するように命じられました。

1409年（永楽7年）、張輔が軍を率いてベトナムの陳頠の乱を鎮圧すると、陳洽はこれに従軍しました。南京に戻ると、永楽帝の漠北遠征にも従軍し、張輔と共に国境地帯で練兵を行いました。1411年（永楽9年）、張輔が再びベトナムの陳季拡の乱を討伐すると、陳洽もまた従軍しました。1415年（永楽13年）4月には兵部尚書に昇進しましたが、交趾に留まり、豊城侯李彬の軍事に参加しました。

1424年（永楽22年）、洪熙帝が黄福を召還すると、陳洽は交趾の軍務に参画したまま、布政使司と按察使司を管掌しました。宦官の馬騏が貪欲で横暴だったため、陳洽は彼を抑えることができず、ベトナムでは4つの反乱が起こり、中でも黎利の勢力が最も強大でした。交趾に駐屯していた栄昌伯陳智と都督の方政は手を拱いていたため、反乱軍は勢力を増大させていました。

1425年（洪熙元年）、陳洽は早期に反乱軍を鎮圧するよう諸将に命じるよう上奏しました。宣徳帝は陳智らを叱責し、進軍を命じましたが、彼らは茶籠州で敗北しました。1426年（宣徳元年）4月、宣徳帝は陳智と方政の官爵を剥奪しました。王通が征夷将軍の印を受けて黎利の討伐に向かい、陳洽もその軍務に参与することになりました。同年9月、王通が交趾に到着し、11月には軍を応平に進め、寧橋に宿営しました。陳洽は諸将と共に地形の悪さを指摘し、伏兵の存在を懸念して軍を駐留させて敵を偵察するべきだと進言しましたが、王通は聞き入れず、兵に狭い道を進むよう指示した結果、泥濘にはまり込んでしまいました。案の定、伏兵が起こり、王通の軍は大敗しました。陳洽は馬を躍らせて敵陣に突入し、重傷を負い落馬しましたが、近くの味方に助け起こされそうになると、生還を拒否し、怒りを露わにして刀を振るい、数人を斬り倒した後、自刎して亡くなりました。享年57歳でした。その後、少保の位を追贈され、諡は節愍とされました。

子の陳枢は刑科給事中となりました。

陳洽は、その卓越した能力と忠義心で、明代初期の激動期を生き抜いた人物として後世に語り継がれています。

もう一度検索