王騰 (前燕)

王騰（おう とう）：前燕に仕えた悲劇の将

王騰（生年不詳 - 356年）は、五胡十六国時代の前燕に仕えた軍人であり、その生涯は激動の時代を反映しています。出自は明らかではありませんが、当初は青州に拠点を置いていた段龕に仕え、徐州刺史という要職にありました。

段龕の配下から前燕への帰順

王騰は、段龕の下で陽都県公に封じられ、徐州一帯の統治を任されていました。しかし、元璽5年（356年）2月、前燕の太原王慕容恪が段龕討伐のために侵攻を開始すると、状況は一変します。慕容恪は、その卓越した軍事的手腕と巧みな懐柔策によって、段龕配下の諸城に帰順を呼びかけました。この呼びかけに応じたのが王騰でした。

王騰は、配下を率いて慕容恪に降伏し、前燕に帰順しました。慕容恪は、王騰の決断を歓迎し、彼に陽都に駐屯することを命じました。これにより、王騰は前燕の将として新たな人生を歩み始めることになります。

東晋との戦い、そして最期

しかし、王騰の新たな人生は長くは続きませんでした。同年8月、段龕は東晋に援軍を要請し、これを受けて東晋は徐州刺史の荀羨を援軍として派遣しました。当時、王騰は趙盤と共に琅邪・鄄城を攻撃し、東晋の北境を騒がせていました。

荀羨は琅邪まで進軍しましたが、前燕軍の強さを恐れ、容易に進むことができませんでした。その間、王騰は鄄城を攻撃していましたが、荀羨は王騰の隙を突き、陽都に進攻しました。折からの長雨で城は大きく損壊しており、荀羨の攻撃によって王騰は捕らえられ、処刑されました。

王騰の最期は、五胡十六国時代の混乱と、その中で翻弄される人々の姿を象徴しています。彼は、時代の流れの中で、自らの立場と運命を大きく変えざるを得なかった人物と言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻75、巻110
『資治通鑑』巻100
『十六国春秋』巻27

関連項目

五胡十六国時代の人物一覧

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