段龕

段龕（だん がん）

段龕は、五胡十六国時代に割拠した鮮卑段部の大人であり、その生涯は激動の時代を反映している。

生涯

父である段蘭の死後、段龕は段部の大人を継承した。当時、段部は後趙に従属しつつも、令支一帯に勢力を保っていた。しかし、後趙では李閔（冉閔）が専横を極め、国内は混乱。これに乗じて、永和6年（350年）に段龕は兵を率いて陳留を拠点とし、自立の道を歩み始める。

同年7月には広固に拠点を移し、斉王を自称する。翌永和7年（351年）には、東晋に使者を派遣し、青州を割譲して帰順を請うた。東晋朝廷はこれを受け入れ、段龕を鎮北将軍・斉公に任じた。

永和10年（354年）には、前燕の青州刺史である朱禿が楽陵郡太守を殺害して段龕のもとに帰順する。しかし、永和11年（355年）に段龕が慕容儁の皇帝即位を非難したことが、前燕との対立を招く。

慕容儁は、撫軍将軍の慕容恪に段龕討伐を命じる。慕容恪は巧みな用兵で黄河を渡り、広固へと進軍。この時、段龕の弟である段羆は、慕容恪の力を警戒し、城を固守して徹底抗戦すべきだと進言したが、段龕はこれを聞き入れず、段羆を処刑してしまう。

永和12年（356年）1月、淄水で前燕軍と激突するも大敗。広固に籠城するも、慕容恪は城を包囲し、長期戦の構えを取る。また、周辺の諸城に降伏を促し、配下の王騰や薛雲らを帰順させた。

同年8月、段龕は東晋に救援を要請。東晋も荀羨を派遣するが、荀羨は前燕軍の勢いを恐れ、進軍を停止してしまう。10月には慕容恪によって糧道を断たれ、城内では飢餓が発生、共食いまで起こる事態となる。追い詰められた段龕は打って出るも敗北し、城内の士気は低下した。

11月、ついに降伏を決意した段龕は、朱禿を前燕に送り、自らは縄で縛られて出頭。慕容儁は朱禿を処刑する一方で、段龕を許して伏順将軍に任じ、斉の地に住まう鮮卑や羯族を薊に移住させた。

しかし、升平元年（357年）6月、段龕は目を潰された後に殺害され、配下3千人余りは生き埋めにされた。これにより、段部は滅亡した。

評価

段龕は、混乱期に乗じて自立を図ったものの、最終的には前燕に敗れ去った。彼の決断の遅れや内紛が、滅亡を招いた要因として挙げられる。段龕の生涯は、五胡十六国時代の群雄割拠の様相と、民族間の抗争の激しさを物語るものであり、その悲劇的な結末は、歴史の教訓として語り継がれている。

参考文献

『魏書』（列伝第九十一）
『晋書』（慕容儁載記）
* 『資治通鑑』（巻第九十八、巻九十九、巻百）

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