班超

班超：西域を制した不屈の武将

班超（はん ちょう、32年 - 102年）は、後漢時代の政治家、軍人であり、字は仲升。歴史家班彪の息子として生まれ、兄に班固、妹に班昭という、いずれも歴史や文学に名を残す人物を持つ名門の出です。

幼少期から歴史を学び、文官としての道を歩むかに思われましたが、兄が宮廷に仕えるようになると、母と妹とともに洛陽へ移り住み、家計を支えるために役所で文書の書き写しをしていました。

西域平定への道

班超の人生を大きく変えたのは、73年に竇固率いる北匈奴征伐への従軍でした。仮司馬として参加した班超は、蒲類海の戦いで武功を挙げ、その才能を見出されます。竇固の命により、36人の部下とともに西域諸国への使者として派遣されたのです。

楼蘭（鄯善国）では、北匈奴の使者が来ていることに気づき、危機を察知した班超は、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」と部下を鼓舞し、奇襲をかけて見事勝利。これを機に楼蘭は漢に降伏しました。その後も、于窴国（ホータン）や疏勒国（カシュガル）を次々と平定し、西域の南半分を後漢の支配下に置くことに成功しました。

逆境と不屈の精神

しかし、75年に明帝が崩御すると、焉耆国が反乱を起こし、西域は再び混乱に陥ります。班超は一時撤退を余儀なくされますが、再び疏勒国を取り戻し、その反逆者を討伐しました。章帝は西域都護を廃止し、班超にも帰還命令を出しましたが、西域諸国の王や貴族たちから嘆願されたため、命令に背き西域に留まる決意をします。本国から見捨てられた状況の中、30余人の部下と共に5年間、疏勒で過ごさざるを得ませんでした。

80年、ようやく援軍が到着し、事態は好転します。84年には莎車国を攻撃し、疏勒王の反乱を鎮圧、87年には西域連合軍を破るなど、目覚ましい活躍を見せました。クシャーナ朝との外交では、使者を送って贈り物をすることで関係を良好に保ち、時には武力を用いてその侵攻を退けました。

西域都護として

90年、クシャーナ朝の攻撃を退けた班超は、翌年には亀茲国を降伏させました。91年には西域都護府が復活し、班超はその初代西域都護に任命されます。94年には焉耆国などを討伐し、西域50余国を後漢に服属させ、長きにわたる西域平定を完了させました。その功績により、95年には定遠侯に封ぜられます。

シルクロードの発展に貢献

西域を安定させた班超は、部下の甘英を西方に派遣し、ローマ帝国（大秦国）の情報収集を試みます。これはシルクロード貿易の発展を促進させる大きな要因となりました。

帰還と晩年

31年間西域に留まった班超は、100年に帰国を願い出て、102年に故郷の洛陽に帰還しました。しかし、その1ヶ月後に71歳で生涯を閉じました。彼の死後、後漢の西域支配力は低下し、西域は再び混乱に陥ります。後漢は班超の子である班勇を派遣し、再び西域を支配しますが、班勇が西域を去ると、諸国は再び反乱を起こし、班超の時代のような勢力を取り戻すことはできませんでした。

班超は、優れた軍事的能力だけでなく、不屈の精神と外交手腕を発揮し、西域の安定に貢献した英雄でした。その功績は、シルクロードの発展にも大きな影響を与え、後世に語り継がれることとなりました。

班超の決意を表す故事

班超の決意を示す言葉として「燕頷投筆（えんがんとうひつ）」という故事があります。これは、班超が文官の仕事を辞めて武将になる決意をした際のエピソードに由来し、大きな決意をすることを意味する言葉として使われています。

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