現代の世界の一体化

1960年代後半以降の世界情勢：ブレトンウッズ体制崩壊と多極化への道

1960年代後半以降の世界は、ベトナム戦争を端緒としたブレトンウッズ体制の崩壊、そして冷戦構造の終焉を経て、多極化へと大きく舵を切った時代でした。この激動の時代を、経済、政治、そして技術革新の観点から紐解いていきましょう。

ベトナム戦争と西側経済の変容

ベトナム戦争は、アメリカ合衆国の国際的な経済的地位を揺るがす大きな要因となりました。巨額の軍事費支出は財政赤字を膨らませ、経済成長とインフレが同時進行するスタグフレーションを引き起こしました。一方、日本と西ドイツを中心とする西ヨーロッパ諸国は、戦争特需や積極的な経済政策によって経済的に急速な発展を遂げました。日本の高度経済成長は「所得倍増計画」によって支えられ、西ドイツでは「エアハルトの奇跡」と呼ばれる経済復興が実現しました。結果として、西側世界はアメリカ、西ヨーロッパ、日本による三極構造へと移行していきました。

冷戦構造の変動と多極化の進展

冷戦構造下では、米ソ両超大国の対立が国際政治を支配していましたが、ソ連と中国の対立、ニクソン大統領の訪中など、新たな地政学的変動も発生しました。また、アジア地域では雁行型経済発展が進行し、日本に続いて韓国、台湾、香港、シンガポールといった「アジアの四小龍」が高度経済成長を遂げました。さらに、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンなども経済的に発展し、10億人を超える人口を擁する中国とインドの台頭は、多極化を加速させる重要な要素となりました。

ブレトンウッズ体制の崩壊と変動相場制

ベトナム戦争による財政赤字と貿易赤字の拡大は、ドルと金の兌換を維持できなくなり、ニクソンショックと呼ばれるドルの切り下げと金との兌換停止へと繋がりました。この出来事は、固定相場制の崩壊と変動相場制への移行を促し、世界経済の大きな転換期となりました。

オイルショックと世界経済への影響

1973年の第四次中東戦争を契機としたオイルショックは、世界経済に大きな打撃を与えました。原油価格の急騰はインフレとスタグフレーションを引き起こし、世界的な景気後退を招きました。日本を含む多くの国々が経済成長の低迷を経験し、「失われた10年」と呼ばれる時代に入りました。一方、石油輸出国機構（OPEC）加盟国は経済力を高め、世界経済における影響力を増大させました。

ヨーロッパ統合の進展

ヨーロッパは、第二次世界大戦後の復興を経て、経済・政治統合を進めてきました。シューマン宣言、パリ条約、ローマ条約を経て設立された欧州共同体（EC）は、その後、単一市場の形成、ユーロの導入など、統合を深化させました。1993年には欧州連合（EU）が発足し、東欧諸国の加盟も進みました。しかし、欧州憲法条約の否決を経て、リスボン条約によって新たな統合体制が構築されました。

アジアNIESの成長とアジア通貨危機

オイルショック後の東アジアでは、韓国、台湾、香港、シンガポールなどが高度経済成長を遂げました。しかし、1997年のアジア通貨危機は、これらの国々に大きな打撃を与え、経済の脆弱性を露呈させました。

冷戦終結とソ連の崩壊

1980年代後半、ゴルバチョフによるペレストロイカとグラスノスチはソ連社会に大きな変化をもたらし、東欧革命、そしてソ連の崩壊へと繋がりました。冷戦終結は、世界秩序を大きく変え、アメリカ合衆国の単一超大国化を招きました。

IT革命と世界経済の一体化

1980年代以降のIT革命は、インターネットの普及などを通じて世界経済の一体化（グローバリゼーション）を加速させました。世界貿易機関（WTO）の設立も、グローバル化を促進する動きの一つでした。

唯一の超大国アメリカと国際政治

冷戦終結後、アメリカ合衆国は唯一の超大国としての地位を確立しました。しかし、9.11同時多発テロ以降、アフガニスタン侵攻、イラク戦争など、軍事介入を繰り返す一方、経済面では新自由主義を推進し、グローバル資本主義を主導しました。

BRICS・VISTAの台頭と多極化の深化

2000年代以降、中国、インド、ブラジル、ロシアといった新興国（BRICS）の台頭が目立ち始めました。これらの国々は、豊富な資源、巨大な国内市場、低コストの労働力を背景に急速な経済成長を遂げ、世界経済における影響力を増大させました。BRICSに続くVISTA諸国も、経済成長を遂げ、多極化をさらに進めています。

非政府組織の台頭とグローバルな活動

グローバリゼーションの進展に伴い、国家を超えた活動を行う多国籍企業やNGO、NPOなどの非政府組織（NGO）の影響力も増大しました。これらの組織は、経済、政治、社会の様々な分野で重要な役割を果たしています。

サブプライムローン問題と世界金融危機

2008年の世界金融危機は、アメリカのサブプライムローン問題をきっかけに発生しました。この危機は、世界経済に深刻な影響を与え、グローバル化の脆弱性を露呈させました。

まとめ

1960年代後半以降の世界は、様々な歴史的出来事を経て、多極化へと向かう大きな転換期となりました。この時代を理解することは、現代世界を理解するために不可欠です。今後の世界情勢を予測する上でも、過去の歴史的変遷を深く理解することが重要です。

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