田中古墳群 (高島市)

田中古墳群の概要

滋賀県高島市安曇川町の田中古墳群は、高島平野の西側、泰山寺野台地の東端に位置している古墳群です。この古墳群は、中央に主墳である田中王塚古墳を抱え約70基の古墳が周囲に点在しています。これらの古墳の築造は5世紀後半から始まり、特に6世紀中ころには最も多くの墳墓が建設されたとされています。古墳の形状は主に円墳と方墳であり、直径は10~20メートル、高さは1~4メートルが一般的です。2007年には、田中36号墳において初めて本格的な発掘調査が行われました。

田中王塚古墳

田中古墳群における主墳である田中王塚古墳は、一般的には「王塚」または「ウシ塚」として知られています。宮内庁には「安曇陵墓参考地」として知られ、被葬者の候補として第15代応神天皇の玄孫である宇非王が挙げられています。この古墳は直径約58メートル、高さ約10メートルの大きな円墳または帆立貝形古墳です。墳丘は2段に築かれ、表面は葺石で覆われ、また埴輪も装飾されています。埋葬方法は不明ですが、粘土槨または木棺が考えられています。築造年代は5世紀後半頃とされ、安曇川南部で最初に建設された首長の墓と位置付けられています。

被葬者に関する考察

彦主人王はこの地域で「三尾之別業」を営んでいたと『日本書紀』に記録されています。彼は継体天皇の父としても知られ、また高島市鴨にある鴨稲荷山古墳が彼の墓であるとの説もありますが、実際のところ本古墳こそが彼の墓であるとする見解が有力です。

古墳の年代とその特徴

2008年には、高島市教育委員会によるフォーラムで田中王塚古墳の築造年代についての調査結果が発表されました。この調査では古墳周辺から採取された埴輪片に基づき、5世紀後半に築かれたことがほぼ確実視されています。さらに、本古墳が前方後円墳でない理由には、時代背景や地方勢力の動向などが関係していると指摘されています。

田中36号墳の注目点

田中古墳群の中でも特に注目すべきは田中36号墳で、2007年に行われた初の本格的な発掘調査の対象となりました。直径24メートル、高さ4メートルの円墳であり、石室が検出されました。石室の全長は7.9メートルあり、壁面には赤色の顔料が施されています。多くの副葬品も出土しており、築造年代は6世紀後半と考えられていますが、現在ではその遺構は埋め戻されています。

古墳群と地域の関係

田中古墳群が築造された背景には、安曇川以北の古墳時代前期からの活動とともに、安曇川以南に新たな開墾地が形成されたとの見方もあります。また、地域の首長の墓としての田中王塚古墳は、安曇川周辺の勢力形成に重要な役割を果たしたとも考えられています。田中古墳群は、古代の社会構造や文化を知る手がかりとなる貴重な遺産であり、今後の研究が期待されています。

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