田中吉信

田中吉信

田中吉信は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将で、柳河藩初代国主である田中吉政の次男として生まれました。

生涯

天正15年（1587年）に誕生したとされ、慶長6年（1601年）には、父・吉政が筑後国主となると、支城である久留米3万石を与えられ、筑後久留米城主となりました。城主として、慶長8年（1603年）には柳川から久留米に至る道路の整備に着手し、城下町の形成にも力を注ぎました。

しかし、慶長11年（1606年）1月20日、家臣を手討ちにしようとした際、逆に斬られて命を落とすという、数奇な最期を遂げました。吉信には家臣を手打ちにするという嗜好があったとされ、彼が返り討ちに遭うまでに、すでに53人もの犠牲者が出ていたという記録も残っています。この事件については、『当代記』にも同様の記述が見られます。

一方で、『筑後志』には異なる記述も存在します。それによれば、家臣を手打ちにする際に誤って自分の膝を傷つけ、その傷が癒えないまま近習の者と相撲をとった結果、破傷風を発症し、満19歳で死亡したとされています。このように、死亡した年や死因について異なる説が存在し、真相は定かではありません。

吉信の死後、乳母が彼を弔うために、現在の柳川市にあった宋安寺に堂を建立しました。乳母の死後、この堂は妙経寺となりました。田中家の改易後、旧領は柳河藩と久留米藩に分割されたため、墓は北野町の西方寺に移され、建立されたと伝えられています。近年では、浄土宗大本山善導寺（久留米市善導寺町飯田550）でも墓碑が確認されています。

田中吉信の短い生涯は、その特異な最期を含め、多くの謎に包まれています。しかし、久留米城主として城下町の発展に尽力したことは、地域に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

* 篠原正一『久留米人物誌』（久留米人物誌刊行委員会、1981年）

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