田中家 (伯爵家)

田中家（たなかけ）

田中家は、武家・華族として知られる日本の家系です。その始まりは、土佐藩の重臣である深尾家に仕えていた浜田家出身の田中光顕が、幕末に田中を称したことに遡ります。維新後、光顕は宮内大臣をはじめとする要職を歴任し、その功績によって華族の伯爵に列せられました。

歴史

田中光顕の出自

田中光顕は、幕末に田中姓を名乗るまでは浜田姓でした。父である充美によれば、浜田家は土佐国東部に発祥し、長宗我部氏に仕えて数々の戦で武功を挙げたと伝えられています。ただし、具体的な名前はわかっておらず、『土佐物語』にも複数の浜田姓の人物が登場するものの、特定は困難であるとされています。

充美自身が、天正14年（1586年）の戸次川の戦いで長宗我部信親に従い戦死した浜田姓の人物について調査した結果、浜田仁兵衛、浜田左衛門、浜田源十郎、浜田彌三郎の4名が戦死者の中にいたことが判明しました。

その後、浜田家は大坂の陣で長宗我部盛親に従って徳川方と戦いましたが、長宗我部氏が滅亡し、浜田家は流浪の身となりました。土佐の長濱村に住み長宗我部氏の菩提を弔っていましたが、徳川方の土佐藩主山内一豊による弾圧を避けるため、高岡郡加茂村の内馬場という場所に移り、百姓として生活することになりました。

笠之丞という人物の代に、妻が土佐藩家老家の佐川領主である深尾重照の乳母として召し出されたことがきっかけで、佐川に移り住み、わずかながらも扶持を与えられるようになりました。その後、善作、笠之丞正満、善作、文右衛門繁盈を経て、光顕の祖父である宅右衛門光章が再び深尾家に仕え、御勝手役兼御勘定役を務めました。天保5年9月に光章が亡くなった後、光顕の父である充美が家督を継ぎ、2人半扶持を与えられました。

光顕自身は、江戸時代の生活の困窮ぶりを回顧しており、米のご飯は年に数回しか食べられず、麦やキビ、芋などを食べて何とか命をつないでいたと語っています。

田中光顕伯爵家

田中光顕は、幕末に土佐勤王党の志士として尊皇攘夷運動に身を投じました。元治元年（1864年）に脱藩した際、浜田から田中に改姓。その後、丙寅丸に乗り長州藩軍と共に幕府軍と戦ったり、中岡慎太郎の陸援隊に加入するなど、国事に奔走しました。特に慶応3年（1867年）の侍従鷲尾隆聚の高尾山挙兵の際には参謀を務め、功績を挙げました。

徳川幕府が滅亡した後、政府に出仕し、大蔵省に入省して大蔵少丞に就任。明治4年（1871年）には岩倉使節団の一員として欧米に渡りました。帰国後には陸軍会計監督に就任し、西南戦争では征討軍会計部長として従軍し、功績を挙げました。

明治14年（1881年）には陸軍少将に任官。また、参事院議官、元老院議官を歴任し、明治20年（1887年）5月には維新の功により華族の子爵に列せられました。その後も会計検査院院長、警視総監、学習院院長などを歴任し、明治31年（1898年）より宮内大臣に就任、以降11年もの間、宮内大臣を務めたことで宮中に大きな勢力を持つこととなりました。明治40年（1907年）9月には、長年の功績により伯爵に陞爵しました。退官後は、維新の志士たちの顕彰運動に尽力し、多摩聖蹟記念館、常陽明治記念館、高知青山文庫の建設や維持に努めました。

光顕が昭和14年3月28日に亡くなった際、実子の圭は既に亡くなっていたため、岩神昴の次男である遜が養子として爵位と家督を相続しました。遜は襲爵前に高知県選出の衆議院議員を務めており、東洋コンプレツソル会社を創立した実業家でもありました。彼の代には、田中伯爵家の住居は東京市渋谷区氷川町にありました。遜も昭和17年7月5日に亡くなったため、その子の光素が家督と爵位を相続しましたが、昭和21年5月に爵位を返上しました。光素が昭和25年2月18日に亡くなった後は、弟の光季が当主となりました。光季の代には、田中家の住居は東京都品川区小山にありました。

系図

（実線は実子、点線は養子。系図は『平成新修旧華族家系大成 下巻』に準拠。）

参考文献

霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 下巻』霞会館、1996年。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年。
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年。
双川富田幸次郎『田中青山伯』青山書院、1917年。

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