由義寺跡

由義寺跡（ゆげでらあと/ゆげじあと）

由義寺跡、または弓削寺跡は、大阪府八尾市東弓削に位置する古代寺院の遺跡です。この地は、古代豪族である弓削氏の本拠地として知られており、寺は弓削氏の氏寺であったと考えられています。「由義」という表記は「弓削」の好字であり、同じ場所を指しています。

歴史

寺の創建時期は明確にはわかっていませんが、弓削氏の氏寺として建立されたと考えられています。弓削氏は、河内国若江郡弓削郷一帯を拠点としていた古代氏族です。また、『延喜式』神名帳に記載されている「弓削神社二座」は、弓削氏の氏神であったと推測されています。

文献上では、天平14年（742年）の「智識優婆塞等貢進文」に寺の名前と僧侶の名前が初めて登場します。国史では、『続日本紀』に天平神護元年（765年）に称徳天皇が弓削寺を訪れ、食封200戸を施入したこと、宝亀元年（770年）には由義寺の塔を造立する詔が出されたことが記されています。称徳天皇と道鏡の時代には、平城京に対抗する西京として由義宮も営まれました。しかし、道鏡の失脚とともに由義寺は衰退したと考えられています。なお、『続日本紀』に見える「竜華寺」を弓削寺と同一とする説や、文治2年（1186年）の古文書に見える「弓削寺」を当寺と同一とする説も存在します。

伽藍

近年の調査により、由義寺の伽藍は八尾市東弓削の東弓削遺跡に比定されています。この遺跡では、奈良時代後半の瓦が大量に出土しており、その中には興福寺や東大寺と同型のものも含まれていることから、由義寺が平城京の大寺院と同等の規模を持っていた可能性が指摘されています。

2017年には、七重塔の跡と思われる塔基壇が発見されました。塔の基壇は一辺20メートルあり、これは当時の大安寺や国分寺の七重塔と同規模です。このことから、道鏡の権力を示すものとする説があります。また、出土遺物から塔が完成していたこと、そして鎌倉時代以前に焼失したことも判明しました。さらに、塔跡の北東約500メートルでは掘立柱建物跡と人工河川跡が発見されており、建物跡は由義宮関連遺構、人工河川跡は資材搬入用の運河であった可能性が指摘されています。

文化財

由義寺跡は、2018年2月13日に国の史跡に指定されています。これにより、この遺跡の歴史的・文化的な価値が公に認められ、保護されることになりました。

由義寺跡は、古代の歴史を物語る貴重な遺跡であり、今後の調査によって更なる発見が期待されています。

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