由貴御倉

由貴御倉：伊勢神宮内宮の静謐な社

伊勢神宮内宮の所管社の一つ、由貴御倉（ゆきのみくら）は、その神聖な役割と歴史から、多くの参拝者にとって興味深い存在です。内宮の宮域、五丈殿の北側に鎮座する由貴御倉は、由貴御倉神（ゆきのみくらのかみ）を祀り、古くから内宮の重要な一部として機能してきました。

清浄なる御饌の奉納

「由貴」という社名は、「清浄で穢れのない」という意味を持ちます。この名称からも、由貴御倉が神聖な場所であることが伺えます。かつては、由貴大御饌（ゆきのおおみけ）に供される御料の御贄（みにえ）を奉納する倉として機能していました。御饌とは、神様へのお供え物であり、由貴御倉はその保管と管理において重要な役割を果たしていたのです。このことから、由貴御倉が内宮の祭祀において欠かせない存在であったことがわかります。

歴史と変遷

由貴御倉の歴史は古く、平安時代以降の記録にもその存在を確認できます。興味深いことに、1975年から1979年にかけては、京都府京都市伏見区の與杼神社（よどじんじゃ）が火災で焼失した際、その仮本殿として社殿が利用されました。この事実からも、由貴御倉の社殿が当時、建築様式や規模において一定の価値を有していたことが推測できます。現在、由貴御倉の社殿は玉垣に囲まれ、静謐な雰囲気に包まれています。賽銭箱は設置されていませんが、その静けさの中に、神聖な空間が保たれているように感じられます。

由貴御倉へのアクセス

由貴御倉へのアクセスは、伊勢神宮内宮へのアクセスと同様です。JR参宮線・近鉄山田線伊勢市駅、または近鉄山田線・鳥羽線宇治山田駅から三重交通バスを利用し、「内宮前」バス停下車後、徒歩で参拝できます。伊勢自動車道伊勢西ICまたは伊勢ICからも車でアクセス可能です。内宮正宮へ向かう参道を進み、五丈殿の北側にある2つの所管社のうち、右側が由貴御倉です。

内宮に到着後、宇治橋を渡り、参道を進むと、五丈殿が見えてきます。その北側に、御酒殿神と並んで由貴御倉が鎮座しています。周辺には、四至神も鎮座しており、神聖な空気に満ちた空間となっています。静かに佇む由貴御倉は、伊勢神宮内宮の豊かな歴史と文化を象徴する存在と言えるでしょう。

参考文献

宇治山田市役所 編『宇治山田市史 上巻』宇治山田市役所、昭和4年1月20日
学研パブリッシング『伊勢神宮に行こう』Gakken Mook神社紀行セレクションvol.1、薗田稔監修、学研マーケティング、2013年7月4日
* 『お伊勢さん125社めぐり』別冊『伊勢人』、伊勢文化舎、平成20年12月23日

由貴御倉は、その歴史と役割から、伊勢神宮内宮の重要な一部を担う神聖な場所です。静かな佇まいの中に、悠久の時を感じることができるでしょう。

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