男はつらいよ 柴又慕情

男はつらいよ 柴又慕情：概要と魅力

『男はつらいよ 柴又慕情』は、1972年8月5日に公開された国民的人気シリーズ『男はつらいよ』の第9作目です。本作は、マドンナ役に国民的女優・吉永小百合を迎え、シリーズの中でも特に高い人気を誇る作品として知られています。同時上映作品は『祭りだお化けだ全員集合!!』でした。

キャストとスタッフの変遷

本作では、テレビシリーズからおいちゃん役を演じていた森川信さんが亡くなったため、松村達雄さんが2代目おいちゃん役に抜擢されました。また、シリーズレギュラーの満男役は、スケジュールの都合で中村はやとさんが出演できず、急遽沖田康浩さんが代役を務めています。

監督は山田洋次氏、脚本は山田洋次氏と朝間義隆氏によって執筆されました。渥美清さん演じる寅次郎、倍賞千恵子さん演じるさくら、そしてシリーズお馴染みの個性豊かなキャラクターたちが織りなす人間模様は、本作でも健在です。

ストーリー：寅次郎と歌子の出会い、そして別れ

とらやでは、家の改築資金を捻出するために寅次郎の部屋を貸し出す計画が進められていました。このことで居場所を失ったと感じる寅次郎は、とらやを飛び出し、啖呵売の旅に出ます。

旅の途中で、吉永小百合さん演じる歌子とその友人たちと出会った寅次郎は、彼女たちと楽しい時間を過ごします。歌子は、著名な小説家である父親との確執を抱え、結婚を目前に苦悩している女性です。

寅次郎は、歌子の優しさに触れ、次第に惹かれていきます。しかし、歌子はすでに婚約者を抱えており、寅次郎の恋は実りません。

歌子は、寅次郎との交流を通じて、自身の結婚への決意を固めます。寅次郎は、歌子の幸せを願いながらも、複雑な思いを抱えつつ、彼女の決断を祝福します。

物語の最後、寅次郎はいつものように旅に出かけます。さくらは寅次郎の寂しさを理解しつつも、彼の自由な生き方を尊重します。

作品が持つ意義と影響

本作は、単なる恋愛物語にとどまらず、家族、友情、そして人生の選択といった普遍的なテーマを描いています。寅次郎の優しさやユーモア、そして人間らしさが存分に表現されており、多くの観客の共感を呼んだことでしょう。

また、本作から8月と12月の公開がシリーズの恒例となり、以降、1989年まで（1986年と1988年を除く）この時期に新作が公開されるようになりました。これは、盆休みと年末年始の観客動員を意識した戦略的な措置であったと考えられます。

吉永小百合さん演じる歌子は、シリーズ13作目の『寅次郎恋やつれ』にも再登場し、寅次郎との再会を果たします。

ロケ地と音楽

本作は、石川県金沢市、福井県、岐阜県多治見市など、各地でロケが行われました。美しい日本の風景が、物語に深みを与えています。

音楽面では、イングランド民謡『埴生の宿』、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ『ウィーンの森の物語』『春の声』、テクラ・バダジェフスカの『乙女の祈り』など、クラシック音楽が効果的に使用されています。

受賞と記録

『男はつらいよ 柴又慕情』は、キネマ旬報BEST10で第6位、同・読者の日本映画BEST10でも第6位にランクインするなど、高い評価を得ました。観客動員数は188万9000人、配給収入は5億1000万円を記録しています。

まとめ

『男はつらいよ 柴又慕情』は、笑いと涙、そして温かい人情を描いた、シリーズの中でも特に傑作とされる作品です。寅次郎と歌子の出会いと別れを通して、人生の喜びと哀しみを改めて考えさせられる、忘れがたい作品と言えるでしょう。 吉永小百合さんの繊細な演技と、山田洋次監督の卓越した演出が、本作の魅力をさらに引き立てています。

もう一度検索