痛快!河内山宗俊

概要

『痛快!河内山宗俊』は、1975年10月6日から1976年3月29日までフジテレビ系で全26回が放送された時代劇です。勝新太郎が主演を務め、自ら率いる勝プロダクションが制作しました。本作は、勝新太郎が1974年のテレビ作品『座頭市物語』で新たな境地を開いた後、さらなる飛躍を目指して制作された作品です。勝の実兄である若山富三郎が、勝演じる河内山宗俊を陰ながら支える北町奉行の遠山左衛門尉景元（通称：金さん）役で準レギュラーとして出演しています。

本作の主人公である河内山宗俊、その舎弟の片岡直次郎と暗闇の丑松、そして金子市之丞、豪商の森田屋清蔵といった主要人物は、明治期の講談師・二代目松林伯圓の創作による講談「天保六花撰」に登場する同名の人物を下敷きにしています。しかし、個々の人物造形については必ずしも講談の内容に準拠しているわけではありません。講談には、直次郎の馴染みの遊女「三千歳」が登場しますが、本作には同様の人物は登場しません。

物語は、弱者を苦しめる悪人を主人公たちが懲らしめるという勧善懲悪の要素を持っています。しかし、主人公たちが悪人を直接的に成敗するとは限らず、政治的な駆け引きや社会的な策略を用いて悪人を追い詰めることが多く、従来の時代劇とは異なる展開を見せます。悪人は「入牢」や「追放」などの処分を受けることが多く、必ずしも命を奪われるとは限りません。また、悪人の末路が不明瞭なまま終わったり、明確な悪人が登場しない回も存在します。

あらすじ

時は天保年間、江戸では第12代将軍徳川家慶が重用する老中首座・水野忠邦が主導する「天保の改革」が推し進められ、華美な祭礼や贅沢が禁止されるなど、庶民の生活は不自由を強いられていました。しかし、その様な世情においても、権力者による悪事は後を絶ちません。そのような悪に立ち向かうのが、数寄屋坊主の河内山宗俊です。

宗俊は、悪徳な権力者の弱みを握って強請り集りを行い、金儲けをしています。しかし、その目的は単なる金銭欲ではなく、御定法では裁けない悪を懲らしめ、虐げられる庶民を救うことにあります。宗俊は、心強い仲間たちと共に、時には強請り集りで、時には詐欺や計略を駆使して、悪を打ち砕いていきます。

登場人物

河内山宗俊（演：勝新太郎）：下谷の武家地に住む数寄屋坊主で旗本。剛胆で曲がったことが嫌いな性格だが、金には目がなく、悪徳な権力者から強請り集りを行うため、幕閣や商人からは厄介者として知られています。
お滝（演：草笛光子）：舟宿ちどりの女将。宗俊とは長い付き合いで、互いに思いを寄せ合っています。宗俊たちの策謀には関わりませんが、時には公家の女房などに扮して協力することがあります。
片岡直次郎（演：ヒデ）：宗俊の舎弟で、元は御家人である武士。普段は帯刀しませんが、必要に応じて武士の姿になることもあります。口先は達者ですが、剣の腕は立ちません。
暗闇の丑松（演：火野正平）：宗俊の舎弟で、百姓出身。お調子者で喧嘩っ早い性格ですが、さほど強くはありません。以前はスリの組織に属していましたが、現在は足を洗っています。
お千代（演：桃井かおり）：深川の材木問屋の一人娘。勘定奉行の策謀で妾にされそうになったところを宗俊に助けられました。その後、舟宿ちどりで働いていましたが、後に浅草の水茶屋の女となります。
金子市之丞（演：原田芳雄）：越後新発田藩の浪人。独自の行動理念を持ち、宗俊の敵にも味方にもなります。酒好きで女好きですが、剣の腕は立ち、宗俊からは「金子市」と呼ばれ頼りにされています。
森田屋清蔵（演：大滝秀治）：宗俊の後ろ盾となる豪商。海産物問屋を営む傍ら、密貿易にも手を染めています。異国の知識や技術を必要とする先進的な考えの持ち主で、蘭学者などの国外逃亡に協力することもあります。
西山玄斉（演：小松方正）：数寄屋坊主の組頭で、宗俊の直属の上司。金に汚く、宗俊を弟分として見下していますが、情報を提供することも。
遠山金四郎（演：若山富三郎）：北町奉行。宗俊とは旧知の仲で、時には協力し、時には手駒として利用します。自ら町人に身をやつして探索することもあります。
鳥居耀蔵（演：岸田森）：大目付。水野忠邦の配下として幕政を推進しますが、宗俊を嫌っており、讒言で宗俊を処罰させようとします。後に南町奉行に転任。
* 水野忠邦（演：山村聡）：老中首座。清濁併せ呑む性格で、厄介者の宗俊を重用し、その訴えを利用することがあります。

その他

本作のナレーターは勝田久が務めました。監督、脚本は各話によって異なります。音楽は青山八郎が担当しました。挿入歌として、出門英が歌う『いつの日か人に語ろう』が使用されました。

実際の河内山宗俊（宗春）は文化文政時代の人物ですが、本作の時代設定は後の天保年間であり、実在の宗春は既に亡くなっています。

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