登録有形民俗文化財

登録有形民俗文化財とは

登録有形民俗文化財とは、文部科学大臣によって文化財登録原簿に登録された有形の民俗文化財のことです。これは、文化財保護法に基づき、特に保存と活用が必要とされるものを保護するための制度です。

制度の背景

この制度は、1996年の文化財保護法改正で創設された有形文化財（建造物）の登録制度を拡充する形で、2004年の改正で有形の民俗文化財も対象に加えられました。従来の文化財指定制度では保護が難しい近代の文化財を、より柔軟に保護することを目的としています。指定制度が国や地方公共団体による指定を必要とするのに対し、登録制度は所有者の自主的な保護活動を支援する仕組みです。

登録の対象

登録の対象となるのは、原則として近代以降に普及した生活文化財です。具体的には、生活用品や工業製品などが該当し、以下の様な特徴を持つものが選ばれます。

生活文化の特色を示すもの：形態、製作技法、用法などが日本国民の生活文化の特色を典型的に示すもの
系統的なコレクション：地域的、技術的な特色を示す系統的な収集品

この制度は指定制度を補完するものであるため、重要有形民俗文化財や地方公共団体指定の有形民俗文化財は登録対象外です。ただし、登録後に国や地方公共団体の文化財指定を受けた場合、原則として登録は抹消されます。しかし、地方公共団体の文化財に指定された場合でも、保存活用の必要性があり、所有者の同意があれば登録を継続できます。

2004年の文化財保護法改正では、登録有形文化財の対象に美術工芸品が追加され、記念物（史跡・名勝・天然記念物）についても登録制度が導入されました。登録された記念物は「登録記念物」と呼ばれます。

登録の基準

登録の基準は、以下のいずれかに該当するものです。

1. 生活文化の典型を示すもの：形態、製作技法、用法などが日本国民の生活文化の特色を典型的に示すもの
2. 歴史的・技術的特色を示すもの：歴史的変遷、時代的、地域的、技術的、生活様式、職能の様相を示すもの
3. 海外との関連を示すもの：外国の民俗文化財で、日本の生活文化との関連を示す重要なもの

登録有形民俗文化財の一覧

2006年3月15日に最初の登録が行われ、若狭めのうの玉磨用具などが登録されました。以下に、地域ごとの主な登録例を紹介します（2024年3月21日現在）。

北海道・東北地方

鷹栖の装蹄用具及び関連資料（北海道）
津軽の林業用具（青森県）
秋田南外の仕事着（秋田県）
白沢の養蚕関係用具（福島県）

関東地方

常陸大宮及び周辺地域の和紙生産用具と製品（茨城県）
常陸大子のコンニャク栽培用具及び加工用具（茨城県）
前橋の養蚕・製糸用具及び関係資料（群馬県）
南牧村の山村生産用具（群馬県）
狭山茶の生産用具（埼玉県）
箱根細工の製作用具及び製品（神奈川県）

中部地方

越後の貸鍬用具（新潟県）
高岡鋳物の製作用具及び製品（富山県）
氷見及び周辺地域の漁撈用具（富山県）
金沢の売薬製造・販売用具（石川県）
七尾の嫁暖簾 (石川県)
若狭めのうの玉磨用具（福井県）
勝沼のぶどう栽培用具及び葡萄酒醸造用具（山梨県）
諏訪湖の漁撈用具及び船大工用具（長野県）
諏訪の下駄スケートコレクション(長野県)
岐阜提灯の製作用具及び製品（岐阜県）
美濃の陶磁器生産用具及び製品（岐阜県）
東子浦の人形芝居用具(静岡県)
大入の花祭用具及び関連資料(愛知県)

近畿地方

志摩半島の生産用具及び関連資料（三重県）
琵琶湖の漁撈用具及び船大工用具（滋賀県）
甲賀売薬の製造・販売用具（滋賀県）
田上の衣生活資料（滋賀県）
京都の郷土人形コレクション（京都府）
亀岡の寒天製造用具（京都府）
丹後半島の漁撈用具（京都府）
宇治茶の生産・販売用具（京都府）
播州三木の鍛冶用具と製品（兵庫県）
武庫川女子大学近代衣生活資料(兵庫県)
高野山奉納小型木製五輪塔及び関連資料(和歌山県)

中国地方

佐治の板笠製作用具及び製品（鳥取県）
倉吉の千歯扱き及び関連資料（鳥取県）
鳥取の二十世紀梨栽培用具（鳥取県）
雲州そろばんの製作用具（島根県）
出雲の藍板締め染め用具及び製品（島根県）
島根半島沿岸及び宍道湖・中海の漁撈用具(島根県)
北木島の石工用具（岡山県）
郷原漆器の製作用具（岡山県）
鞆の鍛冶用具及び製品（広島県）
豊北の漁撈用具（山口県）

四国地方

阿波木偶の門付け用具（徳島県）
丸亀うちわの製作用具及び製品（香川県）
東かがわの手袋製作用具及び製品（香川県）
讃岐六条の水車及び関連用具（香川県）

九州地方・沖縄

玄界灘の漁撈用具及び船大工用具（福岡県）
別府の湯突き用具（大分県）
竹富島の生活用具(沖縄県)

登録抹消されたもの

過去には登録されていたものの、後に重要有形民俗文化財に指定された等の理由で登録が抹消されたものもあります。

与論島の生産・生活用具（鹿児島県）
伊達地方の養蚕関係用具（福島県）
行田の足袋製造用具及び製品（埼玉県）
上尾の摘田・畑作用具（埼玉県）
陸前高田の漁撈用具（岩手県）

まとめ

登録有形民俗文化財制度は、近代以降の生活文化財を保護するための重要な仕組みです。この制度によって、歴史的・文化的に価値のある民俗文化財が適切に保存・活用され、後世に継承されることが期待されます。

文化庁や各都道府県のホームページでは、より詳しい情報や登録文化財の一覧が掲載されていますので、興味のある方はぜひ参照してください。

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