白子原の戦い

白子原の戦い

白子原の戦い（しらこばらのたたかい）は、1525年9月9日（大永5年8月22日）、武蔵国白子（現・埼玉県和光市白子付近）で発生した戦闘です。この戦いは、足利高基とその弟足利義明の間で繰り広げられた後継争いが背景にありました。

大永年間初頭、足利高基と義明は古河公方の後継を巡って対立していました。この争いには、扇谷上杉家の上杉朝興と伊勢氏（後の北条氏）の伊勢氏綱が義明を支持し、山内上杉家の上杉憲房が高基を支持する形で争いが生じていました。しかし、大永4年（1524年）1月、朝興と憲房が和睦を結んだことから、朝興が陽動的に高基を支持した憲房を巻き込み、北条方の氏綱は大きな危機を感じていました。これにより氏綱は江戸城を占拠し、さらに高輪原の戦いへと発展します。

江戸城を巡る戦いは武蔵各地に広がり、特に岩付城や葛西城を巡って両軍の間で熾烈な争奪戦が展開されました。葛西城が北条氏に落ちたことで、足利義明は朝興を援助することを決断しました。この結果、氏綱は自らの立場を強化するために、北武蔵への進軍を図りましたが、厳しい状況が続きました。

2月には氏綱が岩付城の制圧に成功し（岩付城の戦い）、その後も朝興は南武蔵の奪還を試みるなど、状況は激化していきました。この白子原の戦いは、そのような背景の中で行われました。

戦いの結果は、扇谷上杉家が北条軍に勝利し、その中で北条方の指揮官である伊勢九郎が戦死しました。伊勢九郎は資料によっては「櫛間九郎」とも呼ばれ、今川氏の家臣であった福島氏の一族とも関連付けられるなど、歴史的な興味を引く存在です。この戦いは、後の北条氏の家系にも影響を与える重要な出来事となりました。

戦後、上杉朝興は蕨城を攻略し、足利義明と共に北条領への攻撃を行いました。上杉軍は相模国の玉縄城や鵠沼にも侵攻し、北条氏は一時的に苦境に立たされました。しかし、享禄年間に入ると、山内上杉家及び古河公方の家督争いが再燃し、北条氏は再び力を取り戻し、状況を好転させることに成功します。

白子原の戦いは単なる一戦にとどまらず、関東の勢力図を大きく変えるきっかけとなった戦闘でした。その後の武士たちの動きや、後の戦国時代における権力闘争にも少なからず影響を及ぼすこととなります。

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