白鳥伸雄

白鳥伸雄：競輪界の「輪聖」

白鳥伸雄（しらとり のぶお、1928年6月12日 - 2016年2月26日）は、昭和から平成にかけて活躍した元競輪選手です。千葉県習志野市出身で、その卓越した技術と不屈の精神から「輪聖」と呼ばれ、多くの競輪ファンに愛されました。

生い立ちと競輪界への足跡

白鳥は1928年、千葉県習志野市で生まれました。近所の自転車店に勧められたことがきっかけで競輪選手を目指し、わずか10日間の練習で試験に合格。競輪の知識がほとんどないまま、1950年3月1日に神戸競輪場でデビューを果たしました。デビュー直後からその才能を発揮し、翌4月には10連勝を達成し、A級に特進。初期は追い込み一辺倒の戦法でしたが、記念競輪では活躍するものの、特別競輪（現在のGI）での優勝にはなかなか手が届きませんでした。

1959年、立川[[競輪場]]で開催された全国都道府県選抜競輪4000メートル競走で優勝し、初の特別競輪制覇を成し遂げます。しかし、本格的にその名を轟かせるのは、高原永伍、平間誠記という後の「3強」が登場してからでした。

西武園事件と「悲劇のヒーロー」

1960年9月13日、西武園競輪場で起こった「西武園事件」は、白鳥のキャリアに大きな影を落としました。大本命として出走したレースで、スタート直後に自転車がパンク。競走中止という結果に対し、一部の観客は八百長を疑い騒ぎを起こしました。白鳥自身は不可抗力でしたが、この事件を機に「ファンは勝つべきものが勝たないレースには納得してくれない」と痛感し、猛練習に励むようになりました。

さらに、1963年と1964年の日本選手権[[競輪]]では、連続して1位入線したものの内線突破で失格。競輪解説者であった寺内大吉に「白鳥は悲しからずや」と詠まれるなど、「悲劇のヒーロー」としてのイメージが定着しました。

川崎[[競輪場]]での「白鳥胴上げ事件」

1965年5月5日、川崎[[競輪場]]で開催されたオールスター[[競輪]]決勝での出来事は、白鳥のキャリアにおけるハイライトの一つです。ゴールデンウィークと祝日が重なり、会場は異常なほどの混雑ぶりでした。レース直前には、観客がバンク内になだれ込むという前代未聞の事態が発生しましたが、レースは予定通り行われました。

レースでは、白鳥は最後の直線で鮮やかな差しを決めて優勝。高原永伍の3連覇を阻止しました。直後、クールダウン中の白鳥に観客が殺到し、胴上げが始まりました。この「白鳥胴上げ事件」は、当時の競輪界では考えられない光景であり、ファンが白鳥の勝利をどれほど待ち望んでいたかを物語るものでした。白鳥自身も「ああ、競輪選手でよかった」と述懐しています。

この勢いに乗り、白鳥は同年6月の高松宮賜杯競輪でも優勝。さらに年間賞金王にも輝きました。

38歳での特別競輪優勝と突然の引退

1967年、西武園競輪場で行われた秩父宮妃賜杯競輪で優勝。当時38歳という年齢での優勝は、競輪界では異例であり、特別競輪最年長優勝記録として長く語り継がれました。しかし、同年10月、日本選手権[[競輪]]で二次予選敗退後、白鳥は電撃的に引退を表明。「弱くなったと思われたくなかった」という言葉を残し、選手生活に終止符を打ちました。

引退後の活動と「輪聖」の称号

引退後、白鳥は競輪評論家として活躍し、多くのメディアで競輪の魅力を伝えました。1984年からは、その功績を讃え「白鳥伸雄杯」が千葉[[競輪場]]で開催されています。また、日本名輪会の会員としても活動しました。

白鳥の競走スタイルは、当初は追い込み重視でしたが、西武園事件をきっかけに3角捲りを繰り出すようになり、「華麗」と評されました。ファンや関係者は、数々の苦難を乗り越えて競輪界の頂点に立った白鳥を「輪聖」と呼びました。その真面目な性格と、競輪に対する深い洞察力は、多くの人に尊敬され、競輪界に多大な影響を与えました。

2016年2月26日、白鳥は病気のためこの世を去りましたが、その遺志は今もなお、多くの競輪ファンに語り継がれています。

主な獲得タイトルと記録

1959年：全国都道府県選抜競輪4000m競走（立川[[競輪場]]）
1965年：オールスター[[競輪]]（川崎[[競輪場]]）、高松宮賜杯競輪（大津びわこ[[競輪場]]）
1967年：秩父宮妃賜杯競輪（西武園競輪場）
年間賞金王：1965年

競走スタイル

追い込みを主体とする戦法であり、晩年は3角捲りを繰り出すなど、その戦法は「華麗」と称された。ファンや関係者からは『輪聖』と呼ばれていた。

人物像

非常に真面目な性格で、冗談を言ったりふざけたりすることはほとんどなかったという。解説者としては、「競輪は駆け引きが7割を占めるスポーツだ」という言葉をしばしば口にしていた。

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