白鳥古墳 (名古屋市)

白鳥古墳について

白鳥古墳は、愛知県名古屋市熱田区白鳥に所在する古墳時代前期に築造された前方後円墳です。地元では「しらとりこふん」とも呼ばれます。熱田神宮では「白鳥御陵」と称され、古代史における重要な遺跡として知られています。

概要

この古墳は6世紀初頭に築造されたと考えられており、法持寺のすぐ隣に位置し、白鳥公園に隣接しています。かつては法持寺が管理していましたが、1876年（明治9年）からは熱田神宮の管理となり、戦後は名古屋市が管理するようになりました。

墳丘には須恵質の円筒埴輪が巡らされていたことが確認されています。また、かつては墳丘の東側から北西側にかけて幅10メートルほどの周濠があったと推定されていますが、現在ではその痕跡を確認することはできません。

1837年（天保8年）の台風で陵上の樹木が倒れた際に石室が露出し、その構造が記録されました。『尾張名所図会』附録によると、石室は全長約3.7メートル、全幅1.2-1.5メートル、深さ1.5-1.8メートルの石垣組みで、5枚の蓋石によって覆われていたとされています。

墳丘

墳丘の規模は以下の通りです。

墳丘長：70メートル
後円部
直径：45メートル
高さ：6.5メートル
前方部
長さ：30メートル
幅：55メートル
高さ：7メートル

これらの数値は1951年（昭和26年）に名古屋大学が行った調査測量によるものです。しかし、その後の道路建設や鳥居の建設、法持寺の移転改築などに伴い、墳丘の裾部分が掘削され、元の形状を留めていません。前述の調査では、前方部が削平されている可能性や、墳丘東側に平坦面があったことから、2段築成であった可能性も指摘されています。

出土品

出土品は、法持寺の僧侶によって一度取り出されましたが、寺社官への報告・協議の結果、石室に戻され、墳丘も元の状態に復元されました。その際、形状や数が記録されています。

主な出土品は以下の通りです。

装身具：勾玉、切子玉、管玉、双魚形腰佩、銅鏡、六鈴鏡
馬具：楕円形鏡板、f字形鏡板、劍菱形杏葉、鐘形杏葉、辻金具
武器：直刀、鉾、小刀
須恵器：器台付三連坩、子坩四個脚付短頸壷、蓋付小坩、高坏、蓋類、器台

これらの出土遺物の書写図として、小田切春江書写図、植松茂岳書写図、熱田白鳥山法持寺史書写図の3件が伝わっています。これらの図は、当時の石室の様子や出土品の形状を知る上で貴重な資料となっています。

被葬者

考古学的には、この古墳の被葬者は尾張氏の首長であると推定されています。熱田神宮の社伝では、日本武尊の陵とされており、能褒野に葬られた後に白鳥となった日本武尊が当地に降り立ったという伝承に基づいています。神宮では、北方約300メートルに位置する断夫山古墳を「陀武夫御墓」と称し、日本武尊妃の宮簀媛の墓としています。現在も毎年5月8日に、白鳥古墳と断夫山古墳において御陵墓祭が執り行われています。

その他

本居宣長は当地を訪れた際、「しきしまの やまとこひしみ 白とりの かけりいましし あとところこれ」という歌を詠んだと伝えられ、その歌碑が白鳥公園の堀川側の入口横に建立されています。

白鳥古墳は、古代尾張の歴史を語る上で非常に重要な遺跡であり、その歴史的価値は非常に高いと言えます。

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