百川学海

『百川学海』の概要と歴史的意義

『百川学海』（ひゃくせんがっかい）は、南宋時代の学者である左圭によって編纂された重要な漢籍の叢書です。この叢書は、咸淳9年（1273年）に序文が書かれ、南宋の末期に刊行されました。全体は177巻からなり、100種の書物が収められています。印刷された叢書としては最も早いものの一つであり、その後の叢書に大きな影響を与えました。

編纂の背景

『百川学海』は、題名に「百川は海に学びて海に至る」という言葉を用いており、これは揚雄の『法言』から引用されたものです。この言葉は、数多くの書籍を集めて一つの知識の海を形成することを象徴しています。本書は、甲集から癸集までの10集に分かれており、主に唐代と宋代の著作を中心に収録されています。しかし、後漢の蔡邕の『独断』など、他の時代の作品も少数ながら含まれています。

左圭については、序文により字は禹錫、号は古鄮山人であることがわかっていますが、詳しい情報は残されていません。

書籍の構成

『百川学海』には、陸羽の『茶経』や李涪の『刊誤』、葉夢得の『石林詩話』などが収められており、制度、文学、書画、飲食、園芸といった様々な分野の知識を網羅しています。これにより、当時の学問や文化の幅広さを感じさせる内容となっています。

この叢書は、原則として印刷物として広く流通しましたが、各版によって掲載されている書物の内容が異なる場合があります。たとえば、咸淳9年の序のある本や、明代の版本、さらにはその後の影印本など、複数の版が存在しています。特に、弘治本という版においては、元の书物よりも多くの作品が追加されていることもあります。

問題点と批判

ただし、『百川学海』にはいくつかの問題点も存在します。収録されている書物は必ずしもオリジナルの内容をそのまま載せてはいません。たとえば、『直斎書録解題』などの同時代の目録と比較すると、巻数が一致しないことや、著しく短縮された内容も見受けられます。このような編集の自由度が、時には原作の質を損なう可能性も指摘されています。

影響と後世への波及

『百川学海』の影響は甚大で、明の時代には、呉永の『続百川学海』や馮可賓の『広百川学海』といった類似の名を持つ叢書が編纂されました。これらの集合体には、元の叢書を参考にしつつ、新しい資料や時代の著作が追加されています。特に『広百川学海』は、内容が非常に似ているものの、より新しい書物を含んでいるとされています。しかし、四庫全書の総目提要によると、これらは単に『（続）説郛』から抜き出して題名を変えただけだとも伝えられています。

結論

『百川学海』は、南宋時代の文献を集大成した重要な作品であり、後の漢籍叢書の発展に寄与したことは間違いありません。その歴史的意義は、今も多くの学者たちに研究され続けています。

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