皆実町 (広島市)

皆実町（みなみまち）の歴史と現在

広島市南区に位置する皆実町は、太田川の三角州に広がる町です。この地は、猿猴川と京橋川に挟まれた中州の中西部に位置し、その歴史は江戸時代初期にまで遡ります。

皆実町の地理的特徴

皆実町は、太田川の三角州上に位置し、猿猴川と京橋川という二つの川に挟まれた場所にあります。この地理的な特徴が、町の発展と変遷に深く関わっています。京橋川沿いには広島ガスのガスタンクがそびえ立ち、町のランドマークとなっています。

歴史

「皆実新開」の時代

皆実町の起源は、江戸時代初期の埋立地「皆実新開」にあります。この地は、比治山と仁保島（現在の黄金山）の間に広がっていた干潟を埋め立てて造成されました。1662年には、比治山から仁保島にかけての堤防が築かれ、その西半分が「仁保島西新開」、東半分が「仁保島東新開」となりました。1821年、西新開は住民の願いにより「皆実新開」と改称されました。当時の皆実新開は、現在の皆実町だけでなく、周辺の出汐、旭、翠、比治山本町の一部を含む広大なエリアでした。

「皆実村」から「皆実町」へ

明治維新後、皆実新開は「皆実村」となり、1889年の広島市制施行に伴い「大字皆実」となりました。その後、1916年に「皆実町」へと改称されました。この間、宇品港の築港や宇品新道（現在の宇品通り）の建設により、町は大きく変化しました。宇品港が軍港として整備されると、比治山の南側には多くの陸軍施設が建設され、皆実町にも電信第二連隊が駐屯しました。また、1910年には広島ガスの本社と工場、1922年には専売局の煙草製造工場が移転・立地し、特に広島ガスのガスタンクは町のシンボルとなりました。明治初期には綿花が主要な産物でしたが、外綿輸入により衰退し、代わってレンコン栽培が盛んになりました。1933年には町名変更が行われ、東部分が出汐町と旭町、南部が翠町として分立しました。

第二次世界大戦の影響

第二次世界大戦中、宇品通りに広島電鉄皆実線が敷設されました。1945年 8月6日の原爆投下により、皆実町も大きな被害を受けました。特に京橋川沿いの地域は壊滅的な被害を受けましたが、広島ガス工場のガスタンクに残った熱線の陰影は、戦後「原爆十景」の一つに数えられました。

戦後から現在

戦後、皆実町では軍用地が開放され市営の平和住宅が建設され、進徳女子高等学校が移転してきました。また、宅地化が進み、かつての農地は姿を消しました。皆実町中通り商店街は学生街として繁栄しましたが、近年は再開発が進み、街の景観は大きく変化しています。2004年にはJT広島工場が閉鎖され、その跡地には大規模商業施設「ゆめタウン広島」が2008年に開業しました。

現在の皆実町

現在、皆実町は住宅地としての機能に加え、南区役所などの行政施設や、広島ガス本社、広島エフエム放送本社など企業の拠点も集積しています。また、商店街や商業施設も充実しており、生活利便性の高いエリアとなっています。交通面では、国道2号、国道487号（宇品通り）、広島市道中広宇品線、広島市道霞庚午線が通り、広島電鉄の駅も複数存在しています。

町丁と隣接地区

皆実町は、一丁目から六丁目までの住居表示実施済み区域で構成されています。

- 北側：国道2号を挟んで比治山本町。
- 南側：翠、宇品。
- 西側：京橋川を挟んで平野町、千田町。
- 東側：広島市道中広宇品線を挟んで出汐、旭。

主な施設

- 公共施設: 広島皆実町郵便局、広島南警察署皆実交番、猫田記念体育館、広島県健康福祉センターなど。
- 行政施設: 南区役所、南福祉事務所、広島南年金事務所。
- 宗教施設: 法光寺、実践倫理宏正会広島南支部。
- 教育機関: 進徳女子高等学校、広島市立皆実小学校、広島市皆実保育園。
- 公園: 皆実町公園、皆実町第一公園、皆実町第二公園、皆実町第四公園、皆実町緑地。
- 企業: 広島ガス本社、広島エフエム放送本社、中電工中国統括支社。
- 金融機関: 広島銀行皆実町支店、広島信用金庫皆実支店、広島県信用組合皆実支店。
- 商業施設: ゆめタウン広島、皆実町中通り商店街。

交通

- 道路: 国道2号、国道487号（宇品通り）、広島市道中広宇品線、広島市道霞庚午線。
- 橋梁: 平野橋、御幸橋（いずれも京橋川に架かる）。
- 鉄道: 広島電鉄皆実線・宇品線（南区役所前電停、皆実町二丁目電停、皆実町六丁目電停）。