皆蓮寺

皆蓮寺

富山県南砺市皆葎（旧上平村）に位置する皆蓮寺は、真宗大谷派に属する由緒ある寺院です。五箇山地方における真宗信仰の歴史を今に伝える重要な存在といえます。

起源と五箇山への真宗伝播

皆蓮寺の源流は、室町時代後期に遡ります。文明年間（1469年～1487年）、本願寺第8代宗主である蓮如が越前国（現在の福井県）の吉崎御坊に滞在したことは、北陸地方における真宗門徒の激増という大きな波を引き起こしました。この信仰拡大の動きは、山深い五箇山地方にも及び、真宗が地域に根を下ろす契機となります。

五箇山に最初に真宗の教えを広めたのは、越前国にあった和田本覚寺でした。皆蓮寺の前身である皆葎道場を含む、五箇山西部に位置する多くの寺院は、この和田本覚寺の傘下にある道場としてその歴史をスタートさせたのです。これは、当時の北陸における本願寺の布教体制の一端を示すものです。

皆葎道場の歴史と道場主

皆葎道場は、その草創期から地域の人々の信仰生活の中心を担っていました。天文21年（1552年）10月27日付で作成された「五箇山十日講起請文」という古文書には、「お屋衛門大郎」という人物の署名が見られます。瑞願寺に残る注記によれば、このお屋衛門大郎こそが皆葎道場の坊（道場主）の先祖であったと伝えられています。

以後、皆葎道場の道場主は、お屋衛門大郎の子孫とされる市左衛門家が代々務めてきたと考えられています。寛政年間（1789年～1801年）に記された「五ケ山之道場しらべ」という資料には、「加州（加賀国）小松本覚寺道場 皆葎村 市左衛門」と明確に記されており、皆葎道場が本覚寺の系統に連なり、市左衛門家がその役を担っていたことが確認できます。

本堂の建立と近現代の歩み

現在の皆蓮寺の本堂は、江戸時代後期の天保15年（1844年）11月に建立されました。この建物を手掛けたのは、氷見郡大窪（現在の氷見市）で活躍した大工、高木清五郎が棟梁を務めたチームでした。当時の地方建築技術を示す貴重な遺構といえるでしょう。

明治維新を経て、皆葎集落は上平村の一部となります。近代化の波の中で、寺院は地域の教育や社会活動にも関わりました。明治11年（1878年）には、皆葎学校（現在の南砺市立上平小学校の前身）が皆葎道場の敷地内に開設されています。後に小学校が皆蓮寺のすぐ裏手に新築移転した後も、地域の結びつきは続きました。昭和13年（1938年）には、皆蓮寺の境内に皆葎校下季節託児所が開設された時期もあり、地域の子育て支援の場ともなりました。

そして、太平洋戦争後の昭和22年（1947年）4月、皆葎道場は正式に「皆蓮寺」として寺号の認可を受け、今日に至っています。

五箇山における本覚寺下の道場群

皆蓮寺が越前国和田本覚寺下の道場として始まったことは、五箇山地方における真宗門徒の広がりを理解する上で重要な視点です。皆蓮寺だけでなく、周辺の赤尾谷や上梨谷に位置する寺院のほとんども、元々は和田本覚寺の傘下にある道場として出発しました。戦国時代に和田本覚寺に属していたこれらの道場は、本願寺が東西に分派した際に、東方についた加賀国（現在の石川県）小松本覚寺と、西方についた越前国（現在の福井県）鳥羽野万法寺のいずれかに分かれてその系統を引き継ぎました。この系統は現代の五箇山の真宗寺院の組織にも反映されています。

皆蓮寺は、五箇山という独特の地理的・歴史的環境の中で、真宗信仰がどのように根付き、地域社会と関わってきたのかを物語る貴重な存在であり続けています。

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