皇達也

皇 達也

皇 達也（すめらぎ たつや、1941年 - 2021年）は、日本の著名なテレビプロデューサーであり、テレビ朝日におけるバラエティ番組の発展に大きく貢献した人物として知られています。「テレ朝の天皇」という異名を持つほど、同局の顔として長年活躍しました。

生い立ちとキャリア初期

広島県出身で、広島大学附属中学校・高等学校を経て慶應義塾大学文学部を卒業しました。大学在学中からNETテレビ（現在のテレビ朝日）でアルバイトを経験し、その縁で1964年に正式に社員として入社します。当初はドラマ制作に携わっていましたが、その後バラエティ番組の担当へと転じました。

テレビ朝日の変革者として

当時のテレビ朝日は、報道や情報番組に重点を置く堅実な局として知られていました。皇氏はそうした局の体質に新風を吹き込むべく、バラエティ分野で意欲的な番組作りを展開します。「数字が取れなくても良い番組を」という従来の考え方に対し、彼は「いい番組を作ればいい」という局の体質を何とか変えようとして戦い、視聴率を意識した企画を次々と立ち上げました。

代表的な番組とタレントとの関係

1976年に手掛けた『欽ちゃんのどこまでやるの!』では、萩本欽一氏へ直接依頼し、半年間も自宅に滞在して番組を作り上げたという逸話が残ります。この番組は最高視聴率42％を記録する大ヒットとなりました。同年には『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』でキャンディーズや伊東四朗、小松政夫を起用し、「電線音頭」を流行させました。1978年には山城新伍氏司会の音楽番組『笑アップ歌謡大作戦』を開始。1980年代に入り、フジテレビが「楽しくなければテレビじゃない」を掲げて台頭する中、皇氏はテレビ朝日のバラエティを牽引します。タモリ氏に「しばらく深夜で遊んでいてくれ」と依頼し、1982年に深夜バラエティの金字塔『タモリ倶楽部』を、1985年にはスポーツバラエティの礎を築いた『ビートたけしのスポーツ大将』をプロデュース。これらの番組は同局の看板となり、長寿番組へと成長しました。また、1986年の『ミュージックステーション』立ち上げ時には、局内の抵抗に遭いながらも実現させ、2代目司会にタモリ氏を抜擢しています。彼は映画や演劇など他分野出身者を「テレビ第一世代」と呼び、自身のような純粋なテレビ育ちを「テレビ第二世代」と自認していました。

「テレ朝の天皇」と呼ばれる所以

皇氏は、閉鎖的と言われがちだった当時のテレビ朝日の社風を打ち破り、プロダクションやレコード会社、他局との積極的な交流を図りました。その結果、萩本欽一、タモリ、武田鉄矢、ビートたけしといった、当時のテレビ界を代表するスターたちとの強固なネットワークを築き上げました。同時期に報道畑で活躍した小田久栄門氏と共に、その圧倒的な手腕と影響力から、苗字をもじって「テレ朝の天皇」という異名で呼ばれるようになります。顔の大きさにちなんで、他局のプロデューサーと共に「三大プロデューサー」とジョーク交じりに称されたこともあったといいます。萩本欽一氏は皇氏を「型破りなプロデューサー」「テレビプロデューサーになるために生まれてきた人」と評し、自身が今も笑いを続けられているのは皇氏のおかげだと感謝を述べています。

重要な出来事への関与

テレビ界の重要イベントにも深く関わっています。1985年6月24日の松田聖子氏と神田正輝氏の結婚披露宴では、10時間以上に及ぶ密着番組を手掛けました。また、1989年12月31日に行われた中森明菜氏の自殺未遂謝罪会見（金屏風会見）においては、その場で指揮を執ったとされています。

役職歴と晩年

テレビ朝日の事業局長、制作局長などを歴任後、1999年に取締役に昇進し、制作部門を統括しました。その後、子会社であるテレビ朝日サービスの代表取締役社長などを歴任。顧問を経て、株式会社ジャパン・コンテンツ・コンサルティングの代表取締役社長を務めました。その他、一般社団法人日本美術アカデミー理事、リブ・フォー・ライフ美奈子基金理事長など、多岐にわたる活動に関与しました。

エピソード

故郷である広島への思い入れも深く、広島カープの選手たちを可愛がりました。カープが東京遠征する際には、高橋慶彦氏ら多くの選手を銀座に連れて行き食事を奢るなど交流を深めました。高橋氏は皇氏のおかげで芸能人と知り合えたと語っています。また、西城秀樹氏や吉川晃司氏といった広島出身のスターの芸能界入りにも関わったとする逸話が残されています。

死去

2021年3月20日、入院先の東京都内の病院で誤嚥性肺炎のため死去しました。享年79でした。

主な担当番組

彼のプロデュースまたは企画・制作した代表的な番組には以下のようなものがあります。

『欽ちゃんのどこまでやるの!』
『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』
『笑アップ歌謡大作戦』
『ベストヒットUSA』
『タモリ倶楽部』
『ビートたけしのスポーツ大将』
『ミュージックステーション』
『ビートたけしのTVタックル』（担当時タイトル含む）
その他多数

皇氏のもとで育ったスタッフ

皇氏のもとで経験を積んだスタッフの中には、後に活躍した人物が多数います。

山本たかお（タモリ倶楽部、ミュージックステーション等担当）
北村英一（ミュージックステーション、ビートたけしのTVタックル等担当）
板橋順二（ザ・テレビ演芸、愛のエプロン等担当）

皇達也氏は、テレビ朝日のバラエティ部門を確立し、日本のテレビ史に名を刻む偉大なプロデューサーでした。

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