盤渓

盤渓（ばんけい）は、北海道札幌市中央区の西端部に位置する地域です。札幌市の中心部から見て、大倉山や三角山といった山々を越えたさらに奥まった山間部に広がり、その領域の大部分は豊かな山林で覆われています。

この地名は、アイヌ語の「パンケ」に由来するとされています。「パンケ」とは「川下」を意味する言葉であり、この地に流れる盤渓川の下流部にあたる地形的な特徴を示す呼称が、現在の「盤渓」という漢字表記に繋がったと考えられています。

盤渓の歴史は古く、かつては「盤之澤（ばんのさわ）」とも呼ばれていました。明治期には、琴似や新琴似に開かれた屯田兵村のために、陸軍省によって一時的に準備用地として借用されていた記録が残っています。しかし、1894年（明治27年）に日清戦争が勃発し、多くの屯田兵が出征したことを受け、翌1895年（明治28年）からは、この広大な土地が木炭の製造に活用されることとなり、本格的な開拓が始まりました。

開拓の初期、1910年（明治43年）の春には、約1ヶ月にも及ぶ大規模な山火事に襲われましたが、この災害が皮肉にも、その後の土地の利用や開拓を加速させる結果をもたらしました。

大正期に入ると、1914年（大正3年）には地域の北東部に広がっていた官有林が札幌神社の所有地となったことで、その土地を耕す小作農が増加します。さらに1922年（大正11年）には、隣接する琴似村から約1000町歩（およそ10平方キロメートル）もの広大な土地が自作農への払い下げ対象となったことで、土地を所有する自作農家による農業が発展していきました。

行政区分の変遷としては、1942年（昭和17年）2月11日に周辺地域が町制施行により琴似町となったことで、盤渓もその一部となりました。さらに翌1943年（昭和18年）には大字の編成が行われ、この地域全体が正式に「盤渓」という一つのまとまりとして位置づけられます。

第二次世界大戦後、1955年（昭和30年）3月1日には、琴似町が札幌市に編入されたことに伴い、盤渓も札幌市の一部となります。そして1972年（昭和47年）に札幌市が政令指定都市となり区制が導入された際に、盤渓の大部分は中央区の区域に含まれることとなりました。ただし、この時、盤渓地域の北部にあたる一部の山間地は、西区の小別沢として分離されることになりました。

現在の盤渓地域には、盤渓川が流れ、盤渓山、奥盤渓山、砥石山、百松沢山（南峰）といった山々が連なる豊かな自然が残されています。また、地域内には札幌市立盤渓小学校が教育施設として設けられているほか、主要なレジャー施設としては「札幌ばんけい」の中に含まれるさっぽろばんけいスキー場や、コバヴィレッジ キャンプ村などがあり、四季を通じて自然を満喫できるスポットとして多くの人が訪れます。その他、信仰の場として盤渓神社や盤渓山妙福寺などが地域に根ざしています。

施設などは、主に北西から南東方向へ走る北海道道82号西野真駒内清田線沿いに集中して立地しています。札幌市中心部からは距離がありますが、自然豊かな環境とレジャー施設が揃う地域として、市民に親しまれています。

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