直峰城

直峰城（のうみねじょう／なおみねじょう）

直峰城は、現在の新潟県上越市安塚区に位置する、標高344メートルの城山に築かれた中世の山城です。三国街道を眼下に収める交通の要衝に位置し、戦国時代には越後の本拠である春日山城を支える重要な支城網の一つとして機能しました。

歴史

この城がいつ築かれたのか、その正確な時期は明らかになっていません。しかし、南北朝時代には既に存在したという伝承があり、南朝方に属した風間信昭が拠点とした城とも伝えられています。やがて南朝勢力が衰退すると、越後の守護であった上杉氏の支配下に入りました。

永正4年（1507年）、関東へ向かう途上の守護上杉房能が、越後の実力者長尾為景の追撃から逃れるため、当城に立ち寄りました。しかし、為景軍の追撃は厳しく、房能はさらに南の松之山へと逃れ、8月7日に天水越で自刃するという悲劇的な最期を遂げました（この一連の出来事は永正の乱として知られています）。

天文年間（1532年〜1554年）頃には、吉田英忠（あるいは吉田秀忠）という人物が城主を務めていた記録が見られます。

為景の子である上杉謙信（当時は景虎）の時代になると、直峰城の strategic な重要性がさらに高まります。関東への遠征を行う際、春日山城から三国峠へと向かう最短経路の途中に位置していたため、部隊や物資の移動を繋ぐ中継拠点としての役割が重視されました。

天正6年（1578年）に上杉家で御館の乱が発生した際には、小日向隼人佐が城主を務めており、上杉景勝方に味方しました。その後、天正12年（1584年）11月24日には、後の名宰相として知られる直江兼続の父、樋口兼豊が新たな城主として入城しています。

慶長3年（1598年）、上杉景勝が豊臣秀吉の命により会津へ移封されると、代わって越後に入府した堀秀治の重臣、堀光親が直峰城の城主となりました。しかし、慶長15年（1610年）に堀忠俊が改易されて越後を去ると、直峰城もその歴史的役割を終え、廃城となりました。

樋口兼豊は上杉家の会津移封に随行しました。子の直江兼続は後に米沢藩の礎を築きますが、米沢には比較的近年まで「直峰町」という地名が存在していたことが知られています。

慶長2年（1597年）に描かれたとみられる「越後頸城郡絵図」（米沢市上杉博物館所蔵）には、「直嶺之城」としてその姿が記録されています。

城郭と遺構

直峰城は、山頂の本丸を中心に、曲輪が配された典型的な山城の構造を持っていたと考えられます。主要な支城として、虫川城、飯守城、石橋城などがあり、一体となって広範囲を防御していました。

明治40年（1907年）頃には、直峰城の二の丸跡地から「武将図鍔」と呼ばれる刀の鍔が見つかりました。これは2007年に上越市の指定文化財（考古資料）となっています。

城跡は、1959年（昭和34年）3月4日に新潟県の史跡に指定されており、現在も当時の土塁や堀切などの遺構が残されています。

現地情報

直峰城跡は、上越市安塚区安塚に位置しています。公共交通機関を利用する場合、北越急行ほくほく線虫川大杉駅からタクシーで約20分です。車の場合は、北陸自動車道の上越ICまたは柿崎ICから約45分、関越自動車道六日町ICから約85分で、城跡の駐車場までアクセスできます。駐車場は20台程度収容可能で無料です。

駐車場から山頂の本丸跡までは徒歩約15分ほどで到達できます。城跡にはトイレも設置されています。ただし、積雪量が多いため、例年12月から翌年4月下旬にかけての降雪期は立ち入りが困難となるので注意が必要です。

かつて越後と関東を結ぶ要衝を守り、上杉家の歴史を間近で見つめてきた直峰城は、現在、静かな山城跡として、訪れる人々に往時を偲ばせています。

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