真田信尹

真田信尹（さなだ のぶただ）

真田信尹は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、真田幸綱（幸隆）の四男として生まれました。幼名は源次郎。同母の兄には、信綱、昌輝、そして有名な真田昌幸がいます。信尹は、兄の昌幸と同じように、幼少期から人質として甲府に出仕しました。

武田家臣としての活躍

武田信玄の命により、信尹は甲斐の旧族である加津野昌世の養子となり、加津野氏の名跡を継ぎました。隠岐守を自称し、武田勝頼に近侍して槍奉行を務め、「加津野市右衛門尉信昌」と名乗りました。『甲陽軍鑑』によると、武田家では騎馬15、足軽10を率いる槍奉行としての地位にあったとされています。

元亀2年（1571年）には、武田信玄が駿河深沢城を陥落させた際、信昌（信尹）の武功が大きかったと伝えられています。この時、北条綱成の「黄八幡」の旗指物を奪い取ったという逸話も残っています。また、昌幸と同じように、武田家の竜朱印状の奉者を務め、武田家の家臣団の一翼を担っていました。

武田家滅亡後の転身

天正10年（1582年）の織田信長による武田征伐で武田家が滅亡した後、信尹は真田姓に復し、名を「信尹」と改めました。当初は上杉氏に属し牧之島城に配属されましたが、北条氏直が信濃川中島に進軍してくると、兄の昌幸と通じて北条氏に寝返ろうとしました。しかし、山田右近尉に拒否され追放されることとなります。その後、同年9月には、昌幸が北条家から徳川家に乗り換える際、仲介役を務め、自身も徳川家康に仕えることとなりました。

徳川家では5000石を与えられ、後に1万石に加増されましたが、「それだけの働きをしていない」として浪人。一説には、小田原征伐での武蔵江戸城の無血開城の功績に対する恩賞に不満を抱き、家康の下を離れたとも言われています。その後、池田輝政を介して会津の蒲生氏郷に5000石で仕え、同じ武田遺臣の曽根昌世とともに九戸政実の乱平定戦にも参加しました。

蒲生氏郷の死後、蒲生騒動が起こると、慶長3年（1598年）に再び徳川家康に仕え、甲斐で4000石を与えられました。

関ヶ原の戦いと大坂の陣

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦い、慶長19年（1614年）の大坂の陣では、御使番・軍使として功績を挙げ、1200石を加増されて5200石となりました。その後は幕臣として徳川家に仕え、寛永9年（1632年）に86歳で病没しました。墓所は山梨県北杜市の龍岸寺にあります。

信尹の子孫は代々旗本として幕府に仕え、4つの系統に分かれ、そのうち2家が明治維新まで存続しました。

人物像と逸話

信尹は、武田家滅亡後は真田本家とは別行動を取っていましたが、徳川家との橋渡し役だけでなく、常に昌幸に情報を提供し、真田本家を陰ながら支えていました。

大坂の陣では、家康が信尹に命じて「信濃国10万石を知行する」と伝え、豊臣側についた真田信繁（幸村）を誘いましたが、一蹴されたという逸話が残っています。また、信繁の首の確認を行ったのは信尹であるという説もありますが、信繁であるかどうか確証がなかったという説も存在します。

また、大坂の陣の頃には老眼であったという話も残っています。

登場作品

2016年 NHK大河ドラマ『真田丸』：栗原英雄が演じました。

参考文献

柴辻俊六『真田昌幸』吉川弘文館〈人物叢書〉、1996年。ISBN 464205202X。
* 平山優 『天正壬午の乱 本能寺の変と東国戦国史 増補改訂版』 戒光祥出版 2015年

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