矢取島

矢取島の概要

矢取島（やどりじま）は、三重県志摩市浜島町に位置する、かつては無人島だった場所です。かつては豊玉姫を祀る那都珂志社がありましたが、1907年に宇気比神社に合祀されました。浜島港の拡張工事により突堤が築かれ、現在は本土と陸続きになっています。

島名の由来

島名の由来には、興味深い伝承が残っています。

怪物を退治した彦火火出見命（ヒコホホデミノミコト）と、龍宮から来た豊玉姫命が出会った場所が「宿島」（やどりじま）と呼ばれたという説があります。また、『日本書紀』の豊玉姫命伝説に基づき、出産直後の豊玉姫命を見た彦火火出見命に正体が龍だと知られた豊玉姫命が、子を残して龍宮へ帰ってしまいます。その際、豊玉姫命がわが子への矢文をこの島に届けたことから「矢取島」と呼ばれるようになったという説も存在します。

地理

一般的に「矢取島」と呼ばれるのは、突堤で陸続きになった大矢取島です。付近には小矢取島や「渡瀬」と呼ばれる岩礁が存在します。大矢取島には植生が見られるものの、小矢取島と渡瀬には植物は見られません。

どちらの矢取島も海食岸礁であり、干潮時には様々な奇岩や奇礁が現れます。地質学的には中生代の地層である松尾層群に属し、砂岩、礫岩、泥岩などで構成されています。特に小矢取島はマンガン鉄鉱床の露頭となっている点が特徴です。

大矢取島は大潮の際には徒歩で一周することができ、突堤の左側（島の北東部）には礫の浜が現れます。それ以外の場所は岩場となっています。また、かつて島には灯台が設置されていました。

生物群

矢取島の磯には、カキ、カメノテ、ヒジキ、フジツボ、フノリなど多様な生物が生息しており、豊かな生態系が保たれています。

浜島港灯台

矢取島の最高標高点付近には、浜島港灯台が設置されていました。この灯台は1955年3月30日に初点灯しましたが、2010年9月に廃止されました。灯台の高さは8.7mで、現役時代は4秒に1度閃光を発し、光達距離は10海里でした。2011年6月現在、灯台はそのまま残っており、干潮時に堤防の左側に現れる礫浜の右手にある獣道を通って到達できます。

交通アクセス

近鉄志摩線鵜方駅から三重交通バス宿浦行きに乗車し、「浜島」バス停で下車後、徒歩約25分で矢取島に到着します。

参考文献

志摩市市長公室 編『広報しま 平成23年6月号』Vol.132、平成23年6月、32pp.

関連項目

山幸彦と海幸彦

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