石丸利光

石丸 利光

生年不詳 - 明応5年5月30日（1496年7月10日）

戦国時代に美濃国で活躍した武将、石丸利光は丹波守の官位を持ち、斎藤氏に仕えました。後に「小守護代」と呼ばれるほどの権勢を誇った人物です。父は石丸実光とされ、子には利元、利高がいます。娘は尾張の織田寛定に嫁ぎました。

石丸氏はもともと尾張国を本拠とし、美濃守護代を務める斎藤氏の家宰を代々務めてきた家柄と伝えられています。利光は斎藤妙椿（持是院家）に仕官し、応仁の乱ではその指揮下で戦いました。文明5年（1473年）10月29日には、伊勢国桑名郡への侵攻に参加し、東軍勢が守る梅戸城を攻め落とすなど、武将としての力量を示しました。

文明12年（1480年）2月21日に主君である斎藤妙椿が亡くなると、利光はその後を継いだ斎藤利国（後の斎藤妙純）を支え、美濃守護代であった斎藤利藤を近江国へと追放する一幕に貢献しました（この一連の出来事は文明美濃の乱として知られています）。

しかし、同じく斎藤氏の家宰であった西尾直教からの讒言もあり、利純（妙純）との関係は次第に冷え込み、利光は妙純から疎んじられる立場となりました。この状況に対し、利光は主家である斎藤氏に取って代わろうという野心を抱き始めます。折しも、妙純に不満を抱いていた美濃守護土岐成頼と、美濃への帰還を果たしたかつての守護代斎藤利藤から共闘の誘いを受け、彼らと連携することを決断しました。土岐成頼に協力することで斎藤利藤からも許しを得て、「斎藤丹波守利光」と改名し、船田城を拠点とする小守護代に任じられました。

明応3年（1494年）12月、利光は斎藤妙純の暗殺を企てましたが、この計画が西尾直教によって妙純に密告されたことを知り、実行を断念しました。彼はすぐに居城である美濃船田城に兵力を集結させ、妙純の居城である加納城を攻撃しました。この時は、土岐成頼の仲介により、西尾直教の追放を条件に一時的に妙純と和解しました。しかし、成頼が自身の嫡男である政房を廃嫡し、別の息子である元頼を後継者とすることを計画し、そのための協力を利光に求めたことで、事態は再び緊迫します。土岐政房を守護に据えようとしていた妙純との対立は避けられなくなり、状況は土岐氏内部の激しい家督争いへと発展していきました。

明応4年（1495年）6月、利光は土岐元頼を総大将として擁立し、世に言う船田合戦の火蓋を切りました。この戦いは、利光がかつて斎藤氏に恨みを抱いていた清洲織田氏（織田大和守家）の当主織田敏定の嫡子である織田寛定に娘を嫁がせていた縁から、尾張国をも巻き込む大規模な内乱へと拡大しました。

同年6月19日、利光の一族である石丸利定や石丸秀道らは、斎藤方の西尾氏を打ち破る戦果を挙げ、その勢いで加納城を包囲しました。しかし、斎藤軍の激しい反撃に遭い、彼らは奮戦の末、戦死してしまいました。同年7月には、政房方が元頼方の古田氏を攻めた報を受け、利光は一族の石丸正信や馬場氏、国枝氏らを援軍として派遣しましたが、これも敗北に終わりました。自軍の劣勢を悟った利光は、もはや維持できないと判断した船田城に自ら火を放ち、南近江へと逃れ、六角氏のもとに身を寄せました。同年9月には、土岐成頼もやむなく嫡男政房に家督を譲り、この時点での船田合戦は政房方の勝利という形で一旦収束しました。

しかし、戦乱は完全には終わりませんでした。政房方が元頼に味方した織田寛定を討つため、尾張方面に兵力を展開させていた隙を突く形で、明応5年（1496年）3月20日、利光の子である石丸利高が再起を図りました。利高は細川氏、六角氏、北畠氏などの後援を得て南近江で兵を集め、伊勢国を経由して再び美濃への侵攻を開始しました。土岐元頼を総大将とし、斎藤利藤の末子である毘沙童を副将として二手に分かれて進軍しましたが、戦況の変化から利光は利高に進軍を停止させようとしました。しかし、利高はこの父の命令を拒否し、そのまま進軍を続けました。彼は尾張の津島から竹鼻を経て、墨俣で待ち構えていた斎藤軍を撃破すると、隠居していた土岐成頼の居城である城田寺城へと向かいました。

当初、成頼は利光らが城に入ることを拒否しましたが、総大将である土岐元頼も一緒であることを知ると、彼らを城内に招き入れ、共に城田寺城に籠城することになりました。しかし、城はすぐに政房方に与する岩倉の守護代織田寛広（織田伊勢守家）や、斎藤妙純の娘婿にあたる越前朝倉氏の朝倉貞景らに包囲されました。さらに、救援のために駆けつけた六角氏の軍勢も、斎藤方に味方する京極氏によって敗退させられ、城田寺城は孤立無援となり、落城は目前に迫りました。籠城を最後まで主張する子の利元を懸命に説得した利光は、土岐成頼と毘沙童の助命を条件に城を明け渡すことを決意し、降伏しました。しかし、降伏が成立した後の同年5月30日、斎藤軍による奇襲を受け、子である利元と共に自害して果てたのでした。

石丸利光の生涯は、美濃国における斎藤氏と土岐氏の権力闘争、そしてそれに伴う船田合戦という大規模な戦乱と深く結びついています。彼の最期の地とされる岐阜県岐阜市城田寺にある舎衛寺には、「船田合戦終焉之地」を示す碑が建てられています。

参考文献には、『山科家礼記』、国立国会図書館デジタルコレクション収蔵の『群書類従 新校第十六巻』所収「船田前記、船田後記」、『群書類従21 合戦部』、そして『岐阜市史』などが挙げられます。

もう一度検索