石切丸

石切丸（いしきりまる）

石切丸は、平安時代（12世紀）に作られたとされる日本刀（太刀）であり、日本の重要美術品に認定されています。2018年時点では大阪府東大阪市の石切剣箭神社が所蔵しています。

概要

石切剣箭神社所有の太刀は、平安時代の刀工である有成によって作られました。「有成」の銘があること自体が大変貴重であるとされています。2018年には京都国立博物館で開催された「特別展京（みやこ）のかたな」に出展され、主任研究員の末兼俊彦は、観智院本『銘尽』から有成が河内鍛冶の一人であったと推測し、刀姿が古い時代の山城刀と類似している点から、三条宗近および三条派と繋がりがあった可能性を指摘しています。刀剣学者の本間順治も、その出来の良さから三条宗近一派の作品であると評価しています。

一方、刀剣研究家の得能一男は、三条宗近の子、あるいは宗近自身、もしくは奥州有正の門下生であるという説に触れています。飯田一雄は、これらの説に加え、有国の門下生であるという説も存在するとしつつ、河内国で有成を始祖とする一派が形成されたという説が有力であると述べています。

石切丸という名前の由来は不明ですが、「石切」という言葉には、御祭神の神威が非常に強く、岩をも断ち切るほどであるという意味合いが込められていると考えられています。現在は石切剣箭神社の神宝として大切にされています。

室町時代末期の兵火や近代の火災によって資料が失われたため、具体的な奉納の経緯や来歴は不明です。しかし、鞘書きによれば、1936年に研師の大家である平井千葉によって研磨されたことがわかっています。1939年には「太刀 銘有成（再刃）」として重要美術品に認定されましたが、当時は東京在住の個人が所有していました。近世にかけて神社から流出していたものの、刀匠である第14代河内守國助（河内國平の父）の尽力により、時期は不明ながら神社に戻されました。

作風

刀身の全長は99.8センチメートル、刃長は76.0センチメートル。ずっしりとした重みのある太刀です。御神宝目録によれば、区送りの痕跡から、元々の刀身はもっと長かった可能性があるとされています。

焼きムラが見られることから、末兼俊彦は再刃の可能性を指摘しており、広井雄一は再刃であると明言しています。神社の御神宝目録では、もし再刃であるならば、神社の焼失によって焼け身になった可能性があると推測しています。

源義平佩刀との関係

『平治物語』には、源義平（悪源太）が同名の太刀を佩用していたという記述があります。しかし、義平の佩刀と石切剣箭神社が保有する太刀が同一であるかは不明です。

『刀剣ワールド』は、作者である有成が河内で活動していたことや、義平が河内源氏であることを理由に、同一物である可能性を示唆しています。『日本刀図鑑』も、同一物であるかは不明としつつも、もしそうであれば非常に興味深いとしています。

復元プロジェクト

2019年3月、石切劔箭神社は平成から令和への改元奉祝事業として、『刀剣奉納プロジェクト』を計画しました。クラウドファンディングで資金を募り、刀（復元刀）および矢筒を制作し奉納するというものです。重要美術品である石切丸は本殿内へ奉納できないため、復元刀を本殿に奉納することを目的にしています。

復元刀は、日本を代表する刀匠である河内國平によって打たれました。プロジェクトには、PCブラウザ・スマホアプリゲーム『刀剣乱舞』のファンも多く賛同し、クラウドファンディングは開始からわずか4時間弱で目標金額を達成しました。最終的には7975万1388円が集まり、7980名が支援しました。

奉納神宝の公開は、新型コロナウイルス感染症の影響で延期されましたが、2022年6月から2023年5月にかけて『永永無窮』という題で開催され、同年7月8日に奉納奉告祭が行われました。

同名の日本刀

因幡鳥取藩出身の河田景与が所持していた「石斫丸」と呼ばれる刀や、刀工の田口秀弘によって作られた「石切丸」の銘を持つ刀も存在します。

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