石山賢吉

石山賢吉：不屈の精神で時代を切り開いた先駆者

石山賢吉（1882年1月2日 - 1964年7月23日）は、明治から昭和にかけての実業家、ジャーナリスト、そして政治家です。ダイヤモンド社の創業者として経済誌『ダイヤモンド』を創刊し、出版業界に大きな足跡を残しました。また、東宝劇場や理研電線の役員、東京市会議員、衆議院議員、日本雑誌協会会長、日本読書推進協会会長など、多岐にわたる分野で活躍しました。

生い立ちと青年期

石山賢吉は、新潟県西蒲原郡曽根村（現在の新潟市西蒲区）で生まれました。幼少期に父親と死別し、母方の実家がある中蒲原郡白根町（現在の新潟市南区）で育ちました。白根尋常高等小学校を卒業後、白根郵便局、加茂郵便局に勤務。郵便局員時代には、歴史書や文学作品を読み漁り、知識を深めました。22歳で上京し、法律家を目指して日本大学別科に入学しましたが、知人の助言から経済界へ進むことを決意し、慶應義塾商業学校（現・慶應義塾大学商学部）に転校しました。

ジャーナリストとしての活動

慶應義塾在学中から『三田商業界』や『実業之世界』の編集に携わり、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。1913年（大正2年）には、経済誌『ダイヤモンド』を創刊。株式経済に関する独自の視点と分析で、経済界に新たな風を吹き込みました。また、経営に関する書籍の出版にも力を入れ、出版事業の拡大に尽力しました。石山は生涯を通してダイヤモンド社の経営に携わり、社長、会長を歴任する傍ら、第一線でジャーナリストとしても活躍しました。

政治活動

1937年（昭和12年）から1943年（昭和18年）まで東京市会議員を務め、政治の世界でもその手腕を発揮しました。また、戦後には芦田均に推され、1947年（昭和22年）の第23回衆議院議員総選挙で新潟県第1区から衆議院議員に当選しましたが、同年、公職追放となり失職しました。政治の世界での活動は短期間に終わりましたが、その間にも大きな影響力を発揮しました。

ダイヤモンド誌の創刊と成功

石山が創刊した『ダイヤモンド』は、当初は経営難に苦しみましたが、会社評論が評判を呼び、次第に人気を博しました。独自の分析手法とわかりやすい文章が読者の支持を集め、日本を代表する経済誌へと成長しました。石山は、経済記事は誰にでも理解できるよう平易で明快な文章で書くことを重要視し、そのために多くの書籍を読み研究を重ねました。特に、頼山陽の「日本外史」、黒岩涙香の「巌窟王」、夏目漱石の「我輩は猫である」から影響を受け、短い章句で文章を構成するスタイルを確立しました。

経済ジャーナリズムのパイオニア

石山は、決算報告書に基づく企業分析を重視しました。当時、決算報告書の分析は一般には理解されていなかったため、石山の記事は経営者や投資家から絶大な信頼を得ました。また、法人経営における自己資本の重要性を説き、企業経営の中核にもメスを入れるなど、経済ジャーナリズムのパイオニアとしての役割を担いました。著書『決算報告の見方』は、45版を超えるロングセラーとなり、多くの人に影響を与えました。

第二次世界大戦と復興

第二次世界大戦中、政府の企業整備策により出版業界は大きな打撃を受けましたが、ダイヤモンド社は出版部と印刷部の存続を認められ、『ダイヤモンド』の発行を続けることができました。戦後、東京の印刷工場は壊滅状態でしたが、ダイヤモンド社は自社で印刷工場を所有していたため、復興期において大きな強みとなりました。石山は中小印刷業を買収し、印刷事業を拡大することで、本業のダイヤモンド誌を支えました。

アメリカ視察と国際的視野

公職追放期間中には、アメリカやヨーロッパの企業を研究し、会社案内や株主報告書などを分析して『ダイヤモンド』に掲載しました。1953年にはアメリカを視察し、現地の企業経営や株主報告制度を学びました。その成果は『アメリカ印象記』としてまとめられ、日本企業の経営改善に大きく貢献しました。石山は、アメリカの先進的な経営手法を日本に導入し、国際的な視野を養うことの重要性を説きました。

晩年と遺産

晩年は帯状疱疹を患い、入退院を繰り返しましたが、亡くなる直前まで「会社へ行く」と言い続けたという逸話が残っています。1964年7月23日、82歳でその生涯を閉じました。石山の功績は、菊池寛賞、藍綬褒章、紺綬褒章、勲三等旭日中綬章など数々の賞に輝き、その遺志は、現在もダイヤモンド社によって受け継がれています。

人物像

石山は、将棋、野球、相撲、ボクシングなど、多趣味な人物でもありました。また、歌舞伎や新劇を愛し、人間観察にも熱心でした。慶應義塾の交詢社人脈を大切にし、多くの財界人や文化人と交流を持ちました。石山は、経済ジャーナリストとしての卓越した才能に加え、人間味あふれる人格で多くの人を魅了しました。その功績は、出版業界、経済界、そして日本の社会に大きな影響を与えました。

参考文献

『回顧七十年』
『雑誌経営五十年』
『決算報告の見方』など

関連リンク

創業者石山賢吉について（ダイヤモンド社）
* 石山賢吉メモリアルライブラリ（ダイヤモンド社 石山記念ホールHP内）

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