石川貞清

石川貞清：激動の時代を生き抜いた武将、大名、そして商人

石川貞清（いしかわさだきよ）は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけての激動の時代を生きた人物です。武将、大名として名を馳せた一方で、晩年は茶人、商人としても活躍しました。その生涯は、豊臣秀吉の家臣として始まり、関ヶ原の戦いを経て、最終的には江戸幕府の御家人となるという、波瀾に満ちたものでした。

出自

美濃国出身の石川貞清ですが、その出自には諸説あります。父は石川光重（伊賀守）とされることが多いですが、確証はありません。また、石川一光の一族であるという説もあります。兄弟についても、兄に光元、弟に貞信（宗巴）がいるとされていますが、異説も存在します。このように、石川貞清の出自については、不明な点が多く、正確な系譜を特定することは困難です。

武将としての活躍

石川貞清は、豊臣秀吉に仕え、使番として活躍しました。特に、小田原の役では、北条氏政・氏照兄弟の切腹の検使役を務めました。この功績により、尾張犬山城1万2千石を与えられ、さらに信濃木曾の太閤蔵入地の代官も兼務し、12万石を領有する大名となりました。文禄の役では、肥前国名護屋城の普請工事を分担し、秀吉の在陣中は留守番衆として同城に駐屯しました。また、秀吉の草津湯治の際には、居館の建築と警固を担当するなど、秀吉からの信頼は厚かったようです。

関ヶ原の戦いとその後

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、石川貞清は西軍に与しました。徳川家康からの降伏勧告を拒否し、居城である犬山城に籠城しましたが、東軍の攻撃を受けると、西軍の加勢の将たちが東軍に内通しようとしたため、関一政に説得されて城を捨て、西軍本隊に合流します。しかし、西軍は敗北し、貞清は北山龍安寺に避難。その後、親族が住持を務める妙心寺を頼り、池田輝政に助命を嘆願しました。その結果、死罪は免れたものの、所領は没収されました。

しかし、その後の貞清は、商人、茶人として新たな道を歩み始めます。京で隠棲し、宗林と号して茶の湯に親しみました。また、金融業にも手を染め、経済的な基盤を築きました。そして、慶長18年（1613年）には、幕府から扶持米500石を与えられ、幕府の御家人となります。この背景には、貞清が行った石川光忠への支援に対する、光忠の生母で徳川家康の側室であったお亀の方からの報恩の意味が含まれていたのではないかとする説もあります。

家族と親族

石川貞清の妻については、石田三成の娘、または大谷吉継の妹とする説がありますが、確証はありません。また、真田信繁の七女・おかねを妻としたとする説もありますが、これは嫡男である重正の妻であるとする説が有力です。しかし、いずれの説にしても、石川貞清と真田信繁の間には、親戚関係があったと考えられています。また、貞清は、大坂の陣で信繁が戦死した後、竹林院（おかねの母）を京に引き取り、援助したと伝えられています。

妙心寺との関わり

石川貞清は、京都の妙心寺と深い関わりを持っていました。土地を寄進するなど、妙心寺の発展に貢献し、また、大坂城落城後には、福島正則に妙心寺内の土地の一部を譲り受けさせ、海福院を建立させたという逸話も残っています。

その後

石川貞清は、寛永3年（1626年）に死去しました。その子孫は商人として繁栄したとされています。孫にあたる石河（石川）自安は京の豪商となり、茶道具の蒐集家としても知られていましたが、大名貸の失敗により破産してしまったとされています。

石川貞清は、武将として、大名として、そして商人として、激動の時代を生き抜いた人物です。その生涯は、多様な顔を持ち、現代においても多くの人々を魅了し続けています。

参考資料

高柳光寿; 松平年一『戦国人名辞典』吉川弘文館、1981年、30-31頁。
小和田哲男監修著、小和田哲男, 菅原正子, 仁藤敦史編『日本史諸家系図人名辞典』講談社、2003年、116-117頁。ISBN 4062115786。
桑田忠親『太閤家臣団』新人物往来社、1971年、81, 101, 127頁。ASIN B000J9GTRU
白川亨『石田三成とその一族』新人物往来社、1997年、p.273-p.288
川上孤山「国立国会図書館デジタルコレクション第三章第四節（三）」『妙心寺史. 上巻』妙心寺派教務本所、1917年、258-261頁。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/926992/145 国立国会図書館デジタルコレクション。
「第1巻、第9巻」『正法山誌』東林院、1935年。
* 黒川真道編「国立国会図書館デジタルコレクション十二萬石石川備前守貞清」『古今武家盛衰記. 1』国史研究会〈国史叢書〉、1914年。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/985956/107 国立国会図書館デジタルコレクション。

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