石見鉱山

島根県大田市五十猛に位置する石見鉱山は、日本国内における重要な鉱山の一つです。長い歴史を持ち、時代とともに主要な産出品が変化してきました。かつては重晶石、金、銀、石膏、黒鉱などが採掘されていましたが、現在では三井金属工業グループの三井金属資源開発株式会社によって、高品質なゼオライトが生産されています。

石見鉱山の開発は、大正時代に始まります。1919年（大正8年）、松江出身の水藤嘉吉氏がこの地で重晶石の採掘に着手したのがその始まりです。その後、1935年（昭和10年）から1944年にかけては、高丸露頭と呼ばれる場所で、露天掘りによって金銀を含む珪酸鉱が採掘されました。この時期には約1万トンもの鉱石が産出され、分析によると金は1トンあたり6.4グラム、銀は35.5グラムという品位を示していました。

第二次世界大戦後、鉱山の所有権は移り変わります。1951年末に日満鉱業が鉱業権を取得し、翌1952年2月には高丸露頭での試錐探鉱を進める中で、その北東約400メートル地点で新たな石膏と黒鉱の鉱床を発見しました。この発見は、石見鉱山のその後の歴史に大きな影響を与えます。

1955年、三井金属工業がこの鉱山全体の工区を買収。日満鉱業には租鉱権を設定して石膏の採掘を継続させた一方で、それ以外の地域では千原鉱業が黒鉱の採掘と探鉱を担う体制が築かれました。石膏採掘を担った日満鉱業の労働者の多くは九州出身者であり、昭和30年代には彼らとその家族によって約200人規模の鉱山町が形成されました。生産された石膏は、山陰本線の五十猛駅から無蓋貨車に積載されて鉄道輸送されるか、あるいは大浦港から貨物船に乗せられて舞鶴方面などへ出荷されていました。

日満鉱業の租鉱権が終了した1962年には、三井金属工業が新たに設立した石見鉱山株式会社が事業を引き継ぎました。石見鉱山株式会社は石膏の採掘を続ける傍ら、黒鉱の探鉱も精力的に行いました。しかし、時代の変化とともに主要産出品も変わります。石膏の採掘は1975年に終了を迎えましたが、その2年後の1977年からは新たな鉱物資源であるゼオライトの採掘が始まりました。黒鉱についても、鉱量枯渇のため1984年に採掘を終了しました。

法人としての石見鉱山株式会社は、2001年12月31日をもってその歴史に幕を下ろし、事業はグループ会社である三井金属資源開発株式会社に譲渡されました。

石見鉱山で現在採掘されているゼオライトは、地質学的には中新世の久里層に属する凝灰岩層に含まれています。この凝灰岩層は、かつて硫化金属を生成した熱水鉱脈を取り囲むように形成されており、主に斜プチロル沸石を主成分としています。石見鉱業所では、現在二つの採鉱所でゼオライトの採掘が行われています。両鉱区から産出されるゼオライトの量は、日本国内全体の年間採掘量のおよそ10%を占めており、国内有数のゼオライト産地としての地位を確立しています。

採掘方法やゼオライトの種類によって、それぞれの特徴が異なります。一つ目の五十猛採掘場では、日本国内で唯一、ゼオライトの坑内掘りが行われています。ここで産出されるゼオライトは、アイボリー色をしており、比較的軟らかい性質を持っています。「イワミライト」という商品名で流通しており、主に土壌改良材や家畜の飼料添加物などに利用されています。「イワミライト」の主成分はクリノプチロライトであり、吸湿性が高く土壌によく馴染む特性を持っています。

もう一つの長谷採掘場では、露天掘りによって採掘が行われています。こちらの採掘場で産出されるゼオライトは、淡い緑色を帯びており、比較的硬い性質を持っています。「MGイワミライト」という商品名で販売されており、水質や空気の浄化、あるいは建築材の原料など、多岐にわたる用途に活用されています。「MGイワミライト」の主成分はモルデナイトであり、硬度が高く、構造が壊れにくいという特性があります。

このように、石見鉱山は歴史の中で多くの鉱物を産出してきましたが、現在は二種類の高品質なゼオライトを供給することで、様々な産業に貢献しています。

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