砂利鉄道

砂利鉄道とは

砂利鉄道とは、その名の通り、砂利の貨物輸送を主な目的として敷設された鉄道の通称です。20世紀初頭から1960年代頃までの間、特に首都圏などの地域において、その姿を多く見ることができました。

しかし、1964年（昭和39年）に川砂利の採掘が全面的に禁止されたことに伴い、鉄道による川砂利の輸送は行われなくなり、現在ではそのほとんどが現存していません。

歴史

砂利鉄道の成立（1900-10年代）

20世紀初頭、河川敷で採掘された砂利は、建築材料などとして都市部で重要な役割を果たしていました。そのため、砂利を大都市の中心部まで輸送する手段を確保することが急務となり、首都圏を中心に砂利輸送を目的とした鉄道が建設されることになったのです。

特に、東京の都心に近い多摩川においては、砂利の採掘とその鉄道貨物輸送が非常に活発に行われました。その最も初期の代表例として挙げられるのが、1908年に開業した東急玉川線です。

砂利鉄道の発展と砂利採掘の規制（1920-40年代）

大正末期から昭和初期にかけて、砂利採掘の機械化と鉄道による大量輸送が進み、首都圏の砂利鉄道は最盛期を迎えました。

しかしその一方で、砂利の採掘は河川環境に深刻な影響を与えるようになります。堤防の破壊、河床面の低下による橋梁基礎の露出、水質の汚染などが問題視されるようになったのです。

これらの問題の根本的な原因は、砂利の採掘量が上流からの供給量を大幅に上回っていたことにありました。そのため、多摩川をはじめとする河川では、下流地域から順次、砂利採掘の規制が行われるようになりました。

砂利鉄道の終焉（1950-60年代）

第二次世界大戦後、一時的に砂利の採掘は再び活発化しましたが、その制限はより一層強化されることになります。そして、1964年には、多摩川、相模川、入間川、荒川などの主要河川において、砂利採掘が全面的に禁止されるに至りました。これにより、砂利鉄道はその役割を終え、姿を消していったのです。

しかし、東京郊外では宅地化が急速に進行し、通勤客などの輸送量は増大の一途を辿っていました。かつて砂利の貨物輸送のために建設された鉄道は、多くの沿線住民が利用する通勤路線として発展し、その姿を大きく変えることになったのです。

現在

現在、南武線、青梅線、相模鉄道などは、砂利鉄道を主な起源とするものの、通勤路線としてその役割を大きく変え、多くの人々に利用されています。

また、廃止された砂利鉄道の廃線跡は、サイクリングロードや遊歩道などとして整備され、地域住民の憩いの場として親しまれている場所もあります。

砂利鉄道の例

関東地方

思川
乙女人車軌道（→乙女砂利専用鉄道→大正砂利）
入間川
西武安比奈線
埼玉県営鉄道
多摩川
南武鉄道（現・JR南武線）
五日市鉄道（現・JR五日市線）
下河原線
西武多摩川線
京王相模原線
東急玉川線・砧線
相模川
相模鉄道（現・JR相模線）
神中鉄道（現・相模鉄道）

関連項目

砂利
廃線
多摩川

参考文献

* 「多摩川誌」（旧建設省関東地方建設局）

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