磐余

磐余（いわれ）について

磐余（いわれ）は奈良盆地の中部、桜井市阿部・池之内から橿原市南東部の池尻にかけて広がる古い地名です。この地は天香具山の北東山麓に位置し、石村や石寸という表記も使われることがあります。

地名の語源

「磐余」という地名の由来にはいくつかの説があります。その一つは、神武天皇の称号である「神日本磐余彦天皇」にこの地名が含まれていることから来ています。神武天皇の東征の際、兄である磯城の軍が「磐余邑」に滞在したことも記録されています。元々、この土地は片居または片立という名称で呼ばれ、大規模な軍隊が集まったため、古語で「いはめり」と言われることから「磐余」と改名されたとされています。また、「要害地」や「石根（いわね）」の意味を持つという説もあり、さらには古代朝鮮語で「石村」を「いわふれ」と称することが由来とも考えられています。池田末則は「岩群」がその由来ではないかとも論じています。

歴史的背景

磐余は、古代のヤマト政治の中心地として非常に重要な場所でした。ここには数多くの天皇の皇居が存在しました。特に、次のような皇居が記録されています。

• - 第14代仲哀天皇の皇后、神功皇后が居住したとされる磐余若桜宮（いわれわかさくらのみや）
• - 第17代履中天皇の磐余稚桜宮と、磐余池の築造
• - 第22代清寧天皇の磐余甕栗宮（いわれみかくりのみや）
• - 第26代継体天皇の磐余玉穂宮
• - 第31代用明天皇の磐余池辺双槻宮（いわれいけのへなみつきのみや）
• - また、第40代天武天皇の子、大津皇子は、辞世の句を詠んだ歌枕の地としても知られています。

このように、磐余は日本の古代史を語る上で欠かせない地域であり、多くの重要な歴史的事象が展開されました。地名が示す通り、石に関わる文化や、天皇家と深い関わりを持っていたとされ、この土地の重要性を強調しています。

参考文献

• - 『日本書紀』（一） - （四）岩波文庫、1994年、1995年
• - 『日本書紀』全現代語訳(上）・（下）、講談社学術文庫、宇治谷孟：訳、1988年
• - 『古事記』完訳日本の古典1、小学館、1983年
• - 『萬葉集』（一）完訳日本の古典2、小学館、1982年
• - 『岩波日本史辞典』p92、監修：永原慶二、岩波書店、1999年
• - 『角川第二版日本史辞典』p87、高柳光寿・竹内理三：編、角川書店、1966年
• - 『コンパクト版日本地名百科事典』p155、監修：浮田典良、中村和郎、高橋伸夫、小学館、1998年
• - 『コンパクト版日本地名事典』地名事典　p95、吉田茂樹著、新人物往来社、1991年
• - 『コンサイス日本地名事典』第4版 p137 - p138、監修：谷岡武雄、山口恵一郎、三省堂、1998年

関連項目

• - 葛城
• - 磯城

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