社会党 (オランダ)

オランダ社会党(SP)の歴史と現状：マオイスト政党から民主社会主義政党へ

オランダ社会党(Socialistische Partij, SP)は、オランダにおける主要な左派政党です。現在野党ですが、オランダ政治において重要な役割を果たしています。本稿では、その歴史、イデオロギー、組織、選挙結果、そして他政党との関係について詳細に解説します。

黎明期：マオイスト政党から社会党へ

1971年、オランダ共産党(マルクス・レーニン主義派)として結党されました。当初は中国共産党と強い繋がりを持ちましたが、翌年には社会党と改称。党内では、知識人や学生を革命の主体とするか、プロレタリアートとするかで激しい議論が展開され、最終的には後者が主流となりました。

強力な地方組織を構築するため、党独自の診療所を開設し、市民相談を実施。独立系労働組合や環境保護団体など、様々な前衛組織を育成し、特にオスや北ブラバント州で強い地盤を築きました。「人民」、特に労働者階級への密着を重視した政策は、時に物議を醸すこともありました。例えば、1980年代に発表された「外国人労働者と資本」というパンフレットでは、外国人労働者の受け入れを資本家のプロレタリアート支配戦略だと批判し、外国人労働者の同化や帰国促進を訴えました。このパンフレットは、党を「左の中央党」と呼ぶ地方議員まで出現させるほどの衝撃を与えました。

しかし、地方議会への進出に伴い、徐々に穏健化していきました。1977年から第二院選挙に挑み続けましたが、1991年まで議席獲得には至らず、この年、マルクス・レーニン主義を正式に放棄しました。

躍進と安定：議席獲得と路線変更

1994年、初めて第二院に2議席を獲得、翌年には第一院にも進出を果たします。1999年には欧州議会選挙でも議席を獲得しました。1990年代には、労働党(PvdA)が路線変更したことで、社会党や緑の党(GroenLinks)が多くの支持者を受け入れることとなりました。

2002年と2003年の第二院選挙では、議席数をほぼ倍増させました。2003年の選挙では、当初の予想を大きく下回る結果となり、社会党支持者の戦略投票が労働党に流れたと見られています。2004年の欧州議会選挙では2議席を獲得。2005年の欧州憲法条約批准国民投票では、批准に反対する立場をとりました。

2006年の地方選挙では、議席を大幅に増やし、バルケネンデ政権による福祉予算削減への国民の反発が追い風となりました。同年に行われた第二院選挙でも、議席数を大幅に伸ばし、第3党に躍進しました。しかし、与党入りは叶いませんでした。2007年の地方選挙では、自治体における議席数を大幅に増やし、第一院での議席も倍増しました。

その後、2012年以降は議席数を伸ばせず、2019年の地方選挙では議席数を半減させました。2021年の第二院選挙では9議席を獲得しました。

イデオロギーと政策

社会党は民主社会主義を掲げ、人間の尊厳、平等、連帯を重視した社会を目指しています。教育、治安、医療への公共支出の増加を主張し、公共サービスの民営化やグローバル化に批判的な立場を取っています。

党組織と活動

党の最高意思決定機関は党評議会です。年4回開催され、選挙の候補者選定や党の方針決定を行います。しかし、ヒエラルキー的な組織体制は、しばしば批判の対象となっています。2023年現在の党員数は約32,459人です。1990年代以降増加傾向にあった党員数は、2007年をピークに減少傾向にあります。

青年組織やシンクタンクなどの関連組織を持ち、街頭活動なども盛んです。過去には、青年組織との対立や、党内派閥の排除などもありました。

他党との関係

結党以来、野党の立場を貫いており、緑の党とは協力関係にあります。かつては労働党と距離がありましたが、バルケネンデ政権への対抗軸として、関係改善が進んでいます。

結論

オランダ社会党は、マオイスト政党としての出発から、民主社会主義政党へと変貌を遂げ、オランダ政治に多大な影響を与え続けています。近年は議席数を減らしていますが、そのイデオロギーと活動は、オランダ社会において重要な役割を担い続けています。今後の動向に注目が集まります。

もう一度検索