祇園寺 (高梁市)

祇園寺（ぎおんじ）

祇園寺は、岡山県高梁市にある真言宗善通寺派の寺院です。補陀落山と号し、感神院とも呼ばれています。本尊は慈悲深い千手観音菩薩です。

歴史

祇園寺は、標高550メートルの祇園山山頂に位置し、弘仁3年（812年）に空海（弘法大師）によって開かれたと伝えられています。建武年間（1334年 - 1336年）の兵火で伽藍を焼失しましたが、現在の本堂は延宝6年（1678年）に再建されたものです。江戸時代には、松山城主であった水谷氏から手厚い庇護を受けました。

寛政3年（1791年）の記録によると、元々は仁和寺（真言宗御室派）に属する中本寺であり、末寺として西光寺がありました。境内には、寺の鎮守として牛頭天王を祀る祇園宮（牛頭天王社）が現存しており、これは水谷勝隆によって正保2年（1645年）に再建されたものです。これらのことから、祇園寺は京都の八坂神社との関連があったと考えられていますが、明治17年（1884年）の火災で客殿と庫裏が焼失した際に、寺に関する記録や寺宝の多くを失ってしまい、詳細は不明となっています。

文化財

境内には、数々の貴重な文化財が保存されています。

石造宝塔（県指定重要文化財）: 高さ3.58メートルの花崗岩造の宝塔で、延文2年（1357年）に建立されました。銘文から、栄覚という僧が隆善という人物を中心に寄進を受けて建てられたことがわかります。皷神社宝塔（国指定重要文化財）との類似点が指摘されています。
千手観音・両脇侍像（市指定文化財）: 本尊の千手観音像と、脇侍である不動明王、毘沙門天の三体から構成されています。千手観音像は像高170センチメートルの寄木造で、中央で印を組む二手と、左右それぞれ20手ずつの計40手を持っています。足裏には、天文24年（1555年）に修理された旨の記述があります。脇侍の二体も寄木造で、造形から平安時代末期の作と考えられていますが、損傷が激しかったため、2001年（平成13年）に修理されました。
十三重層塔（市指定文化財）: 境内に立つ花崗岩製の十三重層石塔で、高さは約5メートルです。鎌倉時代初期から中期の作と考えられていますが、十三層目の笠部の造形には時代的な疑問も呈されています。
祇園の天狗大スギ（県指定天然記念物）: 牛頭天王社のそばにそびえ立つ、高さ32メートル、根回り12メートルの巨大なスギの木です。弘法大師が植えたという伝説があり、地上5～6メートルのあたりから8本の枝に分かれています。東側の枝は連理になっています。かつてこの木に天狗が現れたのを見たという言い伝えから、「天狗杉」と呼ばれるようになったと言われています。また、樹皮を噛むと歯痛が治るとも伝えられています。

祇園踊

毎年8月27日に行われる夏祭りでは、300年の歴史を持つ「祇園踊」が奉納されます。

祇園信仰と神仏習合

祇園寺の祇園宮は、祇園信仰と神仏習合の名残を今に伝える貴重な存在です。

参考文献

* 圭室文雄編・長坂一雄発行 『日本名刹大事典』、雄山閣出版、1992年8月20日、ISBN 4-639-01115-6

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