祇園信仰

祇園信仰とは

祇園信仰は、牛頭天王とスサノオを神として崇める、神仏習合の信仰です。元々は、仏教的な陰陽道の神である牛頭天王が、中国で道教の影響を受け、日本で神道の神であるスサノオと習合したと考えられています。これは、両者が共に疫病を流行らせる神（行疫神）とされていたためです。

祇園信仰の成立と発展

祇園信仰の原形は、平安時代に成立した御霊信仰に遡ります。人々は、疫病をもたらす行疫神を慰め、鎮めることで疫病を防ごうとしました。この信仰に基づいた祭礼が「祇園御霊会（御霊会）」です。10世紀後半には、京都の住民によって祇園社（現在の八坂神社）で盛大に行われるようになり、次第に祇園社の例祭として定着しました。

祇園御霊会は、朝廷の奉幣を受ける祭となり、後の祇園祭へと発展しました。祭では、山車や山鉾が巡行しますが、これは行疫神を楽しませるためであり、同時に神の厄を分散させる意味も持っていました。

中世には、祇園信仰は全国に広がり、牛頭天王を祀る祇園社や牛頭天王社が各地に建立され、御霊会や天王祭が盛んに行われました。

明治の神仏分離

明治時代になると、神仏分離令によって、神社での仏式の行事が禁止され、「牛頭天王」や「祇園」といった仏教的な名称の使用も禁じられました。これにより、祇園社や牛頭天王社は、祭神をスサノオとする神社へと改められ、社名も変更されました。

京都の祇園社は、鎮座地の地名から八坂神社と改称されました。その他の神社も、八坂神社に倣って改称されたり、祭神のスサノオにちなんだ素盞嗚神社、かつての社名から祇園神社などと改称されたりしました。また、地名を冠したものや、牛頭天王を祀る以前の旧社名に戻った神社もあります。

祇園信仰の多様性

祇園信仰は、地域によって様々な形態を見せています。

津島信仰

愛知県津島市にある津島神社を中心に広まった信仰は、津島信仰と呼ばれ、祇園信仰の中でも独自の位置を占めています。

氷川信仰

一方、埼玉県さいたま市大宮区の氷川神社を中心に関東地方に広がる氷川信仰もスサノオを祀りますが、祇園信仰とは異なる信仰系統です。

祇園信仰の神社

祇園信仰の神社は、各系統によって異なる名称で呼ばれる傾向があります。

八坂神社系統：八坂神社（八阪神社）、弥栄神社、祇園神社、感神社、彌劔神社（八剣神社）
広峯神社系統：広峯神社（広峰神社）、素盞嗚神社（素戔嗚神社）
須佐神社系統：須佐神社、八雲神社
須我神社系統：須賀神社
津島神社系統：津島神社、天王神社

なお、氷川神社や熊野神社もスサノオを祭神としますが、祇園信仰との関連は薄く、出雲の須佐神社も同様です。

関連情報

津島信仰
素盞嗚神社
八王子神社（八王子権現）
* 祇園信仰研究会 - 有志による研究会


祇園信仰は、日本の歴史と文化に深く根ざした信仰であり、その影響は現在でも多くの神社や祭礼に見ることができます。

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