神一ダム

神一ダムについて

神一ダム（じんいちダム）は、富山県富山市に位置し、一級河川・神通川水系に建設された重力式コンクリートダムです。その高さは45メートルで、北陸電力が運営しています。主目的は水力発電で、神通川第一発電所および庵谷発電所に水を供給し、合計で最大132,000キロワットの電力を生産します。

歴史的背景

神一ダムの建設は1951年（昭和26年）に始まりました。この年、日本の発電事業が分割され、北陸地方においては北陸電力がその役割を担うこととなります。戦後の朝鮮戦争が日本経済に好影響を与え、電力需要が急増する中、北陸地方は深刻な電力不足に直面していました。多数の水力発電所が立地する黒部川や庄川の水利権が関西電力に握られていたため、新しい発電所の設立が喫緊の課題となりました。

北陸電力は、神通川に着目し、ここに有望な発電地点を見出しました。神通川は飛騨山脈から流れる豊かな河川で、流速が速く、発電に適した条件が揃っていました。1943年に日本発送電が大規模開発のための着手を企図し、1945年に中断された計画を引き継ぎ、神通川第一発電所の建設を本格的に進めることとなります。

ダムの建設と発電所

神通川第一発電所は片路峡と呼ばれる地点に位置し、神一ダムによって水を供給されます。現在の発電所はフランシス水車を2基備え、ピーク時には8万2,000キロワットの電力を発生できる能力を持っています。この発電所の建設工事は1952年に始まり、1954年には最初の発電機が運転を開始しました。建設の速度は当時としては特に早く、わずか22ヶ月での運転開始が実現したことは注目されました。

その後、神通川第二発電所、神通川第三発電所も運転を開始し、ダム全体での発電能力は増強され続けました。これらの発電所群は、北陸地方の経済成長を支える重要な役割を果たしました。

再開発と新たな発電計画

北陸電力は、さらなる需要に応えるために、新規の電源開発を続けましたが、オイルショックをきっかけに水力発電所の再開発にシフトしました。神一ダムもその候補に挙げられ、庵谷発電所の増設工事が計画されます。新たな取水口を追加することで、発電能力を5万キロワットまで高めることができました。1974年に着手した工事は、1976年に完成し、新たな電力供給が実現しました。

周辺の特徴

神一ダムは風光明媚な片路峡に位置しており、ダムの周辺には吉野橋が架かり、その上からは美しい景色を堪能できます。周囲は自然に囲まれた環境に恵まれており、観光スポットとしても知られています。しかし、ダムの建設に際しては27名の命が失われた悲しい歴史も持ち、慰霊のために観音像が建立されています。

ダムの完成により、水没した民家は段丘に移転されており、地域の歴史の中での興味深い要素となっています。かつては銀山として栄えた庵谷地域は、歴史の遺構を今も見ることができ、地域の文化と結びついた貴重な場所です。

結論

神一ダムは、その発電能力だけでなく、地域の歴史や景観とも深く結びついた存在です。北陸電力が提供する電力は、今なお多くの人々の生活を支え続けており、その役割は今後も重要であり続けるでしょう。

もう一度検索