神代三陵

神代三陵（かみよさんりょう）とは

神代三陵とは、日本神話に登場する三柱の神、瓊瓊杵尊（ニニギノミコト）、彦火火出見尊（ヒコホホデミノミコト）、鸕鷀草葺不合尊（ウガヤフキアエズノミコト）の陵墓の総称です。これらの陵墓は、1874年に宮内省によって、全て現在の鹿児島県内に所在すると治定されました。しかし、古来よりその所在地については諸説あり、現在でも議論が続いています。

各陵墓の名称と記録

それぞれの陵墓の名称は、『日本書紀』には「筑紫日向可愛之山陵（つくしひむかえのやまのみささぎ）」「日向高屋山上陵（ひむかたかやのやまのえのみささぎ）」「日向吾平山上陵（ひむかあひらのやまのえのみささぎ）」と記録されています。しかし、具体的な場所についての記述はありません。

平安時代の『延喜式』諸陵寮では、「日向埃山陵（ひむかえのやまのみささぎ）」「日向高屋山上陵」「日向吾平山上陵」と記されています。しかし、いずれも「日向国にあり、陵戸（りょうこ）なし」とだけ記されており、陵戸が置かれていなかったことがわかります。また、他の陵墓のように郡名や兆域（ちょういき）の記述がないことから、『延喜式』の編纂時には既に所在が失われていたとする説もあります。

平安時代の祭祀

『延喜式』諸陵寮には、上記の三陵の記載に続いて、「已上神代三陵、於山城国葛野郡田邑陵南原祭之、其兆域東西一町、南北一町」という記述があります。このことから、平安時代には、田邑陵（たむらのみささぎ：文徳天皇陵）の南側の祭場で神代三陵の祭祀が行われていたことがわかります。この祭場は現在の京都府京都市右京区付近と推定されていますが、正確な所在地は明らかになっていません。

明治時代の治定

明治7年（1874年）に、現在の可愛山陵（えのやまのみささぎ）、高屋山上陵、吾平山上陵に治定されました。これらの陵墓は、すべて現在の鹿児島県内に位置しています。しかし、これらの場所が本当に神代三陵なのかについては、様々な議論があります。

所在地を巡る議論

『日本書紀』には、ウガヤフキアエズが日向国（現在の宮崎県）で没したという記述があります。一方、薩摩国は大宝2年（702年）に日向国から分離、大隅国は和銅6年（713年）に日向国から分離して成立しました。このことから、本来の神代三陵の所在地は、宮崎県日南市宮浦の鵜戸神宮の周辺であるとする説も根強くあります。このため、宮崎県内の陵墓は陵墓参考地に治定され、現在も宮内庁によって管理されています。

まとめ

神代三陵は、日本神話に登場する神々の陵墓であり、その所在地を巡っては様々な議論があります。現在では鹿児島県に治定されていますが、宮崎県にも有力な候補地が存在します。このため、神代三陵の正確な場所は、現在も歴史研究における重要なテーマの一つとなっています。


参考資料

戸原純一「神代三陵」『国史大辞典』吉川弘文館。
『日本歴史地名大系 47 鹿児島県の地名』平凡社、1998年。ISBN 4582910548。
「日向埃山陵」、「日向高屋山上陵」、「吾平山上陵」。
「中野村」『日本歴史地名大系 27 京都市の地名』平凡社、1981年。


関連項目

宮内庁治定陵墓の一覧
天皇陵
* 地神五代

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