吾平山上陵

吾平山上陵について

吾平山上陵（あひらのやまのえのみささぎ / あいらのやまのえのみささぎ / あいらさんりょう/あいらさんじょうりょう）は、鹿児島県鹿屋市吾平町上名に位置する皇族の陵墓です。この地は、宮内庁によって天津日高彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊（ウガヤフキアエズ）の陵として治定されています。

可愛山陵（えのさんりょう）、高屋山上陵（たかやのやまのえのみささぎ）と共に「神代三陵（じんだいさんりょう）」または「神代三山陵」と総称され、古代日本の歴史を今に伝える重要な史跡とされています。

歴史的背景

『日本書紀』によれば、初代神武天皇は、父であるウガヤフキアエズと母である玉依姫（タマヨリビメ）の第四子として誕生しました。ウガヤフキアエズは西州之宮で崩御し、その遺骸は日向国の吾平山上陵に埋葬されたと記されています。

また、『延喜式』には、吾平山上陵には陵戸（りょうこ：陵の管理をする人）がいなかったとされています。これは、平安時代にはこの陵が手厚く管理されていたわけではなかった可能性を示唆しています。

現在の吾平山上陵

1874年（明治7年）7月10日、宮内省は吾平町上名にある皇族陵を吾平山上陵として正式に定めました。この陵は「鵜戸の窟（うどのいわや）」とも呼ばれ、全国的にも珍しい岩屋の中にあります。窟のある山は鵜戸山と呼ばれています。

陵内には、高さ1.3m、周囲5mの円形の塚と、高さ0.9m、周囲3mの円形の塚の二つが存在します。これらの塚は盤石で覆われており、古代の陵墓の特徴をよく残しています。

吾平山上陵は「小伊勢」とも呼ばれ、1935年（昭和10年）には昭和天皇が、1962年（昭和37年）には皇太子（後の上皇明仁）と皇太子妃（後の上皇后美智子）が参拝されています。1936年（昭和11年）に建立された昭和天皇の参拝記念碑は、1938年（昭和13年）の水害で流出しましたが、1990年（平成2年）に再建されました。

かつて陵内には「鵜戸六社権現」がありましたが、1871年（明治4年）の災害により現在の場所（鹿屋市吾平総合支所｟旧吾平町役場｠の南隣）に移され、鵜戸神社と改称されました。

比定の経緯

吾平山上陵のある鹿屋市吾平町は、かつて大隅国の姶良郡姶良郷でした。その後、薩摩藩の支配を経て、1889年（明治22年）から1947年（昭和22年）までは肝属郡姶良村となりました。なお、鹿児島湾北西部の姶良郡や姶良町とは別の場所です。

1871年（明治4年）には、御陵内の「鵜戸六所権現」が「吾平町 麓」に移され、鵜戸神社となりました。祭神には、ウガヤフキアエズを含む六柱の神々が祀られています。

1872年（明治5年）には、肝属郡高山郷宮下村（現在の鹿屋市肝付町）の六所権現が桜迫神社と改称されました。当時の高山町の説明では、この地がウガヤフキアエズが没した西州の宮であるとされています。

1874年（明治7年）7月10日、明治政府は肝属郡姶良郷上名村に吾平山上陵を治定しました。宮内庁によると、円形の塚の大きな方がウガヤフキアエズの陵、小さな方が妻である玉依姫命の陵とされています。

宮崎県との関係

一方、宮崎県日南市には、ウガヤフキアエズの生誕地とされる鵜戸神宮があります。神武天皇の皇后が日向国吾田邑の吾平津媛であることから、ウガヤフキアエズの陵墓は宮崎県にあるべきだという反論が生じました。そのため、明治政府は1896年（明治29年）に鵜戸神宮の背後の山上を「御陵墓伝説地吾平山上陵」と定めましたが、現在は「鵜戸陵墓参考地」となっています。

まとめ

吾平山上陵は、古代日本の皇室の歴史を伝える貴重な史跡です。その独特な岩屋の形式や、天皇や皇族の参拝歴からも、この陵が重要な場所であることがわかります。また、宮崎県との関連など、歴史的な議論が交わされた場所としても、その存在は特筆すべきものと言えるでしょう。

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