神田隆 (俳優)

神田隆：映画とテレビドラマの両方を彩った名優の生涯

神田隆（かんだたかし）は、1918年4月14日、東京府東京市赤坂区（現在の東京都港区赤坂）に生まれ、1986年7月13日に68歳で亡くなった日本の俳優、声優です。本名は神田澄孝。かかしプロ、アマチプロゼ、北川事務所に所属していました。

東大卒業から映画界へ

東京帝国大学文学部仏文科を卒業した神田は、1942年に日本出版文化協会に入社します。上司には、のちに有名な漫画家となる杉浦明平がいました。しかし、彼の運命を大きく変えたのは、映画評論家の内田岐三雄との出会いでした。内田は神田の堂々とした容貌と雄弁さに注目し、1943年に松竹大船撮影所への入社を推薦しました。こうして神田は映画界に足を踏み入れ、『暖き風』で俳優デビューを果たします。戦後には『象を喰った連中』で細菌研究所員を演じ、高い評価を獲得しました。

新藤兼人脚本の作品などにも出演し、重要な役どころを演じましたが、決定的な代表作には恵まれませんでした。1950年代に入ると、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）によるレッドパージの影響で、神田も追放のリストに載せられ、同年、松竹を退社することになります。

東映時代と渋みのあるベテラン役

1951年にはキヌタプロの設立に参加し、その後は独立プロの映画に出演。東京俳優協会を経て、1955年に東映に移籍しました。東映では、『警視庁物語』シリーズをはじめとした多くの作品に出演し、渋みのあるベテラン刑事や会社の部長といった役柄で存在感を示しました。

1970年代に入ると、テレビドラマの時代劇や刑事ドラマへの出演が増え、悪役や黒幕、犯人役といった役柄を演じる機会が多くなりました。次第にそのイメージが定着し、個性的な悪役として多くの作品を彩りました。

特撮作品への出演と政治家役

一方で、特撮作品にも積極的に出演しており、『マイティジャック』、『怪奇大作戦』、『ミラーマン』、『仮面ライダーシリーズ』、『ロボット8ちゃん』など数々の作品にゲストや準レギュラーとして出演しました。特に『ウルトラマンレオ』では、MAC（マット）の最高責任者である高倉司令官役を演じ、誠実で高い見識を持つ人物像を印象的に演じきりました。

また、神田は政治家の佐藤栄作に似ていたことから、映画『金環蝕』や『不毛地帯』では、佐藤栄作をモデルにした政府高官役を演じ、その高い演技力で役柄をリアルに表現しました。

突然の死

1985年頃から狭心症を患い、エスカレーターでの移動中に発作を起こすこともありました。1986年7月13日午前7時5分、『必殺仕事人V・激闘編』最終回の撮影終了後、京都駅でエスカレーターを降りる際に転倒。そのまま搬送先の京都市内の病院で亡くなりました。

後世への影響

神田隆の死後、彼の持ち役を引き継いだ俳優には、北川勝博（『シャーロック・ホームズの冒険「入院患者」』のブレッシントン役の追加吹替部分）、五王四郎（『ブリット』のサム・ベネット警部役のテレビ朝日版WOWOW版追加収録部分）などがいます。

神田隆は、映画からテレビドラマ、特撮、そして吹き替えまで、幅広いジャンルで活躍した名優でした。数多くの作品に出演し、それぞれの役柄で高い演技力を発揮した彼の功績は、今もなお多くの人の記憶に刻まれています。彼の急逝は、日本の映画・テレビ界にとって大きな損失となりました。

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