神角寺

神角寺（じんかくじ）

神角寺は、大分県豊後大野市朝地町鳥田に位置する高野山真言宗の寺院です。如意山と号し、本尊には十一面千手千眼観音を祀っています。

概要

標高730mの神角寺山の頂上付近に位置し、境内には樹齢100年を超える約500本のシャクナゲが植えられています。このため、「石楠花寺（しゃくなげでら）」とも呼ばれ、5月の開花時期には多くの観光客が訪れる名所となっています。神角寺は、霊山の霊山寺、九六位山の円通寺とともに豊後の三大寺院と称される古刹です。また、周辺地域は神角寺芹川県立自然公園に指定されており、豊かな自然に囲まれています。

歴史

神角寺の創建には、欽明天皇31年（570年）に新羅の僧によって建立されたという伝説があります。桓武天皇の時代には、山中に三百もの僧坊があったと伝えられ、当時は天台宗の寺院でした。その後一時荒廃しましたが、醍醐天皇の時代に聖宝によって36の僧房が再建され、真言宗の寺院として復興しました。

建久7年（1196年）には、大野荘の領主であった大野九郎泰基が、大友氏初代当主の大友能直との戦いに敗れ、この寺で自害したという悲しい歴史もあります。その後、戦火により再び荒廃しましたが、応安2年（1369年）に大友氏によって本堂を含む六坊が再建され、中興されました。

天正年間（1573ー1592）には、島津氏と大友氏の戦いにより神角寺も荒れ、僧房はわずか二坊になったと伝えられています。豊臣秀吉の時代には、大友氏が豊後から追放され、慶長9年(1604)に中川氏が豊後岡藩を統治するようになり、神角寺本堂は大規模な修理を受けました。その後、大正10年、昭和6年、平成18－19年にも改修が行われ、現在の姿に至っています。

文化財

神角寺本堂（国指定重要文化財）

室町時代の応安2年（1369年）に大友氏によって建立された宝形造、桧皮葺の建物です。正面3間、側面3間の禅宗様式を残す美しい建物で、内部には秘仏の観世音菩薩が安置されています。脇侍には不動明王と聖宝理源大師が祀られており、17年ごとに半開帳、33年ごとに本開帳が行われます。

木造金剛力士立像（国指定重要文化財）

山門に安置されている一対の金剛力士像で、高さは約2.5mあります。鎌倉時代前期の作とされ、寄木造彩色で作られています。静的な表現の中に力強さが感じられる優れた仏像です。昭和58年からの修理の際、体内から僧良慶ら47名の名前が書かれた木札が発見され、当時の元寇という時代背景から、国家安全を願い荘園領主や地頭が寄進したのではないかと考えられています。また、木札の裏には、岡藩6代藩主中川久忠が京都の仏師山本左門に依頼して大修理を行ったことが記されています。

地質

神角寺周辺は、大野火山岩類の一つである三宅山火砕流堆積物の柱状節理がよく見える場所です。旧参道は柱状節理を階段のように削って作られており、羅漢像などの仏像も置かれ、真言宗寺院の厳かな雰囲気を醸し出しています。

神角寺は、豊かな自然と歴史が調和した、訪れる人々を魅了する場所です。

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