福井県の市町村歌一覧

福井県に属する各市町村では、地域のシンボルとして自治体歌やそれに類する楽曲が制定・採用されています。これらの歌は、市町村の歴史や文化、住民の誇りを表現するものであり、その制定状況や内容は時代と共に変化してきました。この記事では、福井県内の市町村が現在または過去に有していた主な自治体歌等について、その概要や特徴を解説します。

歴史的背景と現状

福井県の市町村歌の歴史は、昭和期に始まります。県庁所在地の福井市では、1935年（昭和10年）に初代の市歌が制定されましたが、戦後は歌われなくなり、市制100周年を迎えた1988年（昭和63年）に事実上二代目となる新しい市歌が誕生しました。昭和の時代に、明確な「市歌」として定められたのは、福井市、敦賀市、そして現在の越前市の前身である旧武生市に限られます。しかし、昭和の大合併で誕生した自治体の中には、大野市のように市制5周年を記念した式典歌や、勝山市のように市制施行を祝う歌が作られる例も見られました。

平成に入り、特に平成の大合併を経てからは、自治体歌を取り巻く状況がさらに多様化します。新たに誕生した坂井市では新しい歌が作られましたが、それ以前から存在する小浜市や鯖江市でも、市制周年記念事業などを機に新しい愛唱歌やイメージソングが発表されました。あわら市のように、2009年（平成21年）に制定した市民憲章に曲を付けて、それを実質的な市歌として扱うというユニークな取り組みも見られます。

また、必ずしも「市歌」や「町歌」という名称や位置づけではなくても、地域振興や特定のテーマに沿った楽曲が作られるケースもあります。例えば、勝山市や永平寺町では、男女共同参画をテーマにした歌が作られています。このように、福井県内の市町村歌は、その正式な位置づけや制定経緯、表現内容において、各自治体の個性や時代の変化を映し出しています。

市部の主な自治体歌等

福井市
福井市歌: 1935年（昭和10年）制定。作詞：一力強、作曲：山田耕瑳。市役所新庁舎落成を記念して作られましたが、現在は公的な場で歌われることはほとんどありません。市では廃止はしていないとしています。
わたしのまちときめきのまち: 1988年（昭和63年）制定。作詞：宮下義則、補作：島田陽子、作曲：榊原政敏。市制100周年を記念して作られた歌で、現在はこちらが市の代表的な歌として扱われています。

敦賀市
敦賀市歌: 1952年（昭和27年）3月24日制定。作詞：花田龍彦、作曲：下総皖一。これは二代目の市歌にあたり、2003年（平成15年）には歌詞の一部が改訂されています。

小浜市
この風を感じて: 2012年（平成24年）発表。作詞：朝倉修、作曲：野平龍一。元々は市制50周年記念の吹奏楽曲として2002年に作られたものに、市制60周年を機に歌詞が付けられました。

大野市
市制五周年式歌: 1958年（昭和33年）発表。作詞：小林寿子、作曲：松島巧。市制5周年記念式典のために選ばれた歌であり、市として恒常的な市歌が定められているかは不明です。

勝山市
勝山市制祝賀の歌: 1954年（昭和39年）の市制施行を記念して作られ、市制60周年記念式典でも演奏されました。
勝山ふるさとの歌: 2013年（平成25年）発表。作詞：津村節子、作曲：三木たかし。旧福井県立勝山南高等学校の校歌を、閉校に伴い歌詞の一部を改訂して市民愛唱歌としたものです。

鯖江市
このまちが好きなんや: 2010年（平成22年）1月15日発表。作詞：岩堀美雪、作曲：一途。「ふるさと鯖江の日」制定を記念するイメージソングです。

あわら市
あわら市民憲章: 2009年（平成21年）制定。作詞：あわら市、作曲：堀田庸元。市民憲章の全文をそのまま歌詞とし、曲が付けられています。

越前市
正式な市歌は未制定です。合併前の武生市と今立町の合併協議会では、特に市歌の制定に関する取り決めは行われませんでした。

坂井市
ふるさと讃歌〜いのち息づくまち〜: 2011年（平成23年）10月10日発表。作詞・作曲：ヒナタカコ。

町部の主な自治体歌等

永平寺町
正式な町歌は未制定です。ただし、男女共同参画テーマソング「いついつまでも」が存在します。

池田町
ICE ICE BABY: 2012年（平成24年）発表。作詞・作曲：横山剣。町のイメージソングとして作られました。

南越前町
正式な町歌は未制定です。

越前町
越前ふるさと音頭みんな美し越前町: 2015年（平成27年）2月1日発表。新設合併10周年を記念して作られた町民音頭です。

若狭町
ビッグステージ・若狭: 町のイメージソングとして作られました。

美浜町
美浜町民の歌: 1979年（昭和54年）8月制定。作詞：森菊蔵、作曲：松山かずお。

高浜町
自治体歌の存在は不明です。ご当地ソングとして「高浜小唄」や「若狭高浜音頭」があります。

おおい町
正式な町歌は未制定です。合併前の旧大飯町には町歌がありましたが、合併協定で「新町において定める」とされつつも、現在まで実現していません。

廃止された市町村歌

福井県では、市町村合併などを理由に廃止された、あるいはその地位を失った自治体歌も複数存在します。

旧敦賀市歌: 1937年（昭和12年）に市制施行を記念して制定された初代の市歌です。
旧武生市歌「伸びゆく武生」: 1950年（昭和25年）11月に制定されました。
旧越前町民歌: 現在の越前町の新設合併前に、（旧）越前町が制定していた町歌です。合併により失効しました。
旧越廼村歌「羽ばたく越廼」: 旧越廼村で歌われていました。
* 旧上中町歌「上中音頭」: 旧上中町で歌われていた音頭です。

これらの情報は、福井県内の市町村における自治体歌の多様なあり方を示しています。正式な市町村歌だけでなく、愛唱歌やイメージソング、さらには特定のテーマソングに至るまで、様々な楽曲が地域のシンボルとして、または地域活動の一環として存在しています。

（参考文献：中山裕一郎監修『全国都道府県の歌・市の歌』東京堂出版、2012年）

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