福田雅太郎

福田雅太郎（ふくだまさたろう、1866年 7月7日 - 1932年 6月1日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本陸軍の将官です。長崎県大村市に大村藩士の子として誕生し、後の陸軍大将に至る波瀾万丈の生涯を送りました。

生い立ちと初期の軍歴

現在の長崎県大村市にあたる地域で、福田市兵衛の次男として生まれた福田雅太郎は、大村中学校、有斐学舎で学んだ後、陸軍の道を志します。1887年7月、陸軍士官学校（旧9期）を卒業し、歩兵少尉として歩兵第3連隊に配属されました。その後、陸軍大学校（9期）に進み、1893年11月に卒業。これは、後の彼のキャリアが参謀畑を中心に展開することを示唆していました。

参謀としての活躍と海外経験

陸大卒業後、福田は参謀本部第2局員となります。日清戦争には第1師団の副官として従軍。戦後、ドイツへの留学を経験し、帰国後は参謀本部員として編制動員班長を務めました。また、陸軍大学校の教官や、元帥である大山巌の副官、さらにはオーストリア公使館付武官など、多様な役職を歴任し、国際的な視野と戦略的な知見を深めました。日露戦争開戦前には、田中義一や秋山真之といった面々と共に、対露早期開戦論を唱えた一人としても知られています。日露戦争では、第1軍参謀として作戦主任を務め、戦局の展開に深く関与しました。

昇進と要職

日露戦争後も福田のキャリアは順調に進みました。第1軍参謀副長、第3師団参謀長、再びオーストリア公使館付武官を経て、参謀本部課長、歩兵第38連隊長、歩兵第53連隊長などを歴任。1911年9月には陸軍少将に昇進し、歩兵第24旅団長を務めました。その後も、関東都督府参謀長、参謀本部第2部長といった要職を歴任し、1916年5月には陸軍中将に進みました。中将として欧州出張を経験した後、第5師団長、参謀本部次長、そして台湾軍司令官を歴任。1921年12月には陸軍大将に昇り詰めました。

関東大震災と甘粕事件

陸軍大将に進級した福田は軍事参議官となります。1923年9月に関東大震災が発生すると、混乱収拾のために設置された関東戒厳司令官を兼務しました。しかし、戒厳司令官在任中に発生した甘粕事件（憲兵によるアナキスト大杉栄らの殺害事件）を巡り、その対応の不手際から責任を問われ、わずか半月足らずで司令官の任を解かれることとなりました。この出来事は、その後の彼のキャリアにも影響を与えることになります。

陸軍大臣候補問題と襲撃

1924年、第2次山本内閣の総辞職に伴い、清浦内閣が組閣される際に陸軍大臣のポストが問題となります。当時の陸軍における閥争い、特に上原勇作を頂点とする上原閥と、田中義一を中心とする長州閥（田中閥）の対立が背景にありました。上原は自身の閥に属し、また親友でもあった福田を陸相に推薦しましたが、田中義一がこの動きを阻止するために水面下で工作を行います。田中は清浦首相や陸軍の要人と交渉し、福田の甘粕事件での傷を利用するなどして、自身の腹心である宇垣一成を陸相に就任させることに成功しました。この一件は「陸軍大臣事件」と呼ばれ、上原閥と田中閥の対立を決定的なものとしました。福田は親友田中の裏切りによって陸相就任を阻まれ、またこの件が遠因となり予備役入りへと繋がっていきます。

また、甘粕事件に対する怨恨から、福田は二度にわたる襲撃を受けます。1924年 9月1日には、東京のフランス料理店で和田久太郎に狙撃されますが無事でした。翌年5月23日にも、福岡での祝賀会中に再び狙撃されましたが、この時も無傷でした。襲撃犯の和田久太郎は一審で死刑判決を受けています。

予備役後と晩年

相次ぐ出来事の後、福田は1925年5月に予備役に編入されました。しかし、その後の活動も多岐にわたります。1928年1月には大日本相撲協会の会長に就任し、角界の発展に尽力。1930年4月には枢密顧問官という重要なポストに就き、国家の重要政策に関与しました。

軍人としての栄典も多く、最高位階は従二位、勲一等旭日大綬章、功三級金鵄勲章を授与されています。また、聖マイケル・聖ジョージ勲章ナイト・コマンダーなど多数の外国勲章も受章しています。

1932年 6月1日、福田雅太郎は65歳でその生涯を閉じました。彼の娘婿には陸軍中佐の安田銕之助、陸軍中尉の奈良三郎がおり、孫には歴史学者の安田元久がいます。

陸軍の中枢を担い、激動の時代を生き抜いた福田雅太郎は、軍事、政治、さらには相撲界と、晩年まで様々な分野でその存在感を示した人物でした。

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